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十月兔

強制女装を中心とした小説・イラストのブログです。

2009-05

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乙女座の園 第1エリア(3)

 ゆうゆ様、こんばんは。お褒めいただいて恐縮です。
 投票フォームは、右の方に「アンケート」として載っているものがそうですので、皆様ご気軽に投票下さい。やっぱり子供服が暫定一位ですね(笑)

 * * *

(3)

 企画部の課長はまだ少し迷っているようだ。やがて彼は、もう一人の面接官に目を向けた。先ほどから一言も発言していない面接官だ。
「……滝くんはどう思う? 部長はああいってるし、僕もそれほど積極的に反対ではないけど、普通の女性の意見も聞きたいな」
 まるで春香が普通の女性ではないかのような言いぐさだが、春香は何も言わずに、残る一人の面接官の言葉を待つ。
 その面接官はほかの二人とは明らかに毛色が違い、まだ若い女性だった。おそらく高校生か、いっていても大学生。きりりとした目元にポニーテールが似合っている。
 彼女が着ているのも、良介と同じウェイトレスの制服だった。しかし色が違う。彼女が着ているのは淡いブルーで、この色はウェイトレスの中でもただ一人、店主に当たる役職のウェイトレス長しか着ることが許されていない。つまり彼女は、《Sweet Spirits》の総責任者なのだ。
 一方、良介が着ている制服はピンクの「ウェイトレス研修生」。つまりこれだけで、自分がこの少女より格下の存在なのだと知らされてしまう。
 そんなピンクの制服を着た良介を、彼女……滝と呼ばれた少女は、じろりと見る。
「男性がウェイトレスとして働く、それも男子禁制の『乙女座の庭』でやるなんて、とんでもない。……本来なら、そう言わざるをえません」
 若い外見の割に、シャープでクリアな話し方。それだけで、彼女の有能ぶりが知れる。
「しかし人手が足りないのも事実ですし、それに外見の方も問題はないでしょう。むしろ、本当に男性なのかどうか確かめたいくらいです」
「じゃあ……」
「ただし」
 微笑む春香に、内心落ち込む良介。その二人を見比べながら、滝はこう言った。
「我々《Sweet Spirits》のウェイトレスはみな、厳しい審査をくぐり抜けてこの制服を着て働く誉れを受けています。そして、この制服を恥ずかしがるではなく、誇るでもなく、ただひたすらお客様のために奉仕する精神に則って身につけているのです」
 自らの矜恃と威厳を滲ませて、少女は言う。良介はちょっとひるんだ。少女は続けて、
「彼にその覚悟があるかどうか、示してもらいたいのです」
「具体的には?」
 尋ねる春香に、滝は臆することなく目を向ける。
「……これから彼に、駅前で、お客様の呼び込みキャンペーンに立ってもらいます。それには、ビジネスマンの多いここ東京よりも、若者が多く集まる渋谷あたりがよろしいでしょう」
「それは良いわね」
 春香はくつくつと笑う。思わぬところで、彼女の趣味に合うシチュエーションが生まれたわけだ。
 しかし良介はたまらない。思わずこう言った。
「ちょっと待ってください、この格好で、その、渋谷に……」
「それで恥ずかしがるようなら、ウェイトレスとして働くことなどとてもおぼつかないと思いますが?」
 滝は厳しい目で良介を見る。反論できずにいるところに、彼女は思い出したように言った。
「そういえば、自己紹介がまだでしたね。あたしの名前は滝さやか。《乙女座の園》の第一エリアにあるカフェテリア、《Sweet Spirits》のウェイトレス長です。……有沢さん、だったかしら? これから一緒に駅でのキャンペーンに行くことになるんだから、敬語は抜きで行くわね。ついていらっしゃい。……人事部長、企画課長、お二方も、それでよろしいでしょうか?」

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