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十月兔

強制女装を中心とした小説・イラストのブログです。

2009-05

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乙女座の園 第0エリア(4)

(4)

 「B&B」の事務服は、基本的にピンク地に白いストライプが入ったベストとタイト・スカート。この二つだけが指定される形で、襟のリボンの着用は自由というものだ。
 そして、ブラウスの形は個々人の自由にまかされる。しかし実際は、レギュラーカラーか、あるいはベルカラーのブラウスを着用する人が多かった。どうしても、ブラウスとしての汎用性や、着易さが重視されるのだ。
 そんな中で留美は、スタンドカラーのブラウスやフリルブラウスなど、結構おしゃれしている。総務部の手伝いに駆り出されることの多い良介にとっては、ちょっとした目の保養だ。しかしそのおしゃれを自分がするとなると……話は別である。
 慣れない左前のボタンを止めながら、自分がいま留美のブラウスを着ていることに、良介は少し変態になった気分だ。着られるかどうかが不安だったが、留美の体格が意外としっかりしているのか、それとも自分が華奢すぎるのか、ブラウスは一番上まできっちりボタンを留めることができた。
 肩から腕にかけてはゆったりしたラインになっており、薄い素材でできているため、肌の色が透けている。さらに首もとから鎖骨のあたりは、薄いレース生地の切り替えになっていて、こちらはさらにはっきりと肌色が浮いていた。
「怖いくらい似合うわね。はい、リボン」
 赤いリボンを止めると、首元が少しきつくなると同時、よりいっそう自分がOLの制服を着ていることを意識させられる。
 しばらくそのまま、スカートを渡してくれない。これで、下着姿にブラウスとリボンだけというのは、逆に恥ずかしいものだ。
「その、はやく、スカートを穿かせてください」
「へぇ。スカート穿きたいんだ、有沢君。しょうがないわねぇ」
「有沢先輩って、やっぱりそういう趣味だったんですね。はい、スカート」
 言いたい放題だ。良介は屈辱に唇を噛み、やっと渡されたスカートに両脚を通す。下着越しに裏地が肌に当たって、こちらもくすぐったい。言われるがままにファスナーを右側に回すと、タイト・スカートのきれいなラインが出た。
 上からベスト。こちらは普通のベストとは違い、胸元を大きく開けて強調するデザインだ。女性社員が着れば、胸元を強調されてセクシーさを発揮するのだろうが、男が自分で着るのは正直避けたい。良介は、ボタンを留めながらそう思った。
 しかしそれでも、ブラをつけているため、やや胸のふくらみがあるようにさえ見える。ベストの下から押し上げられたブラウスのラインが強調され、まるで女性のようだ。
 もちろん、肩幅のあるごつい男が着れば、ただただマズイ光景になるだけだろう。しかし良介は身長一六二センチ、体重は四六キロしかなく、留美のブラウスも、むしろ余裕があるほどだ。スカートやベストもぴったりで、体型的には何の違和感もない。
 そんな彼を見て、二人は口々に言う。
「ほら、やっぱり似合ってるじゃない。鏡見てみなさいよ」
「あー、何で男のくせにそんな似合うんですかぁ。口惜しいなぁ」
 そう言って鏡の前に連れてこられた良介。しかし、確かに首から下は女子制服を着て違和感のない容姿になってしまっているが、顔はどうみても男だ。留美のほうがよほど可愛い。
「……古本さん、冗談を言うなよ。君のほうがよほど美人じゃないか」
「そのセリフ、他の女の子と比べて言われたのならぐっと来ないでもないですけど、男の人と比べて言われたくありません。しかも先輩、すっぴんでそれですよね? メイクしたら絶対にあたしより美人になる予感がするんで、とりあえずなんかやりきれない思いにまかせてこのまま先輩を外に放り出して先輩の今の姿を全社員の目にさらしていいですか?」
 良介はぎくりと、留美から距離をとった。目が据わっている。どうやら、自分のすっぴん顔と比べていろいろ傷ついたあげく、何やら羨望の炎を燃やしているらしい。
 そんな留美に苦笑しながら、社長はこう言った。
「落ち着いて、留美ちゃん。とりあえずメイクして、彼がどれほど美人になるか見てあげましょう。外に放り出すのは、それからでも遅くないわ」
 ありがとう社長。意外に古本さんをなだめる側に回ってくれたんでほっとしました、でも外に放り出すのは勘弁してください。良介の内心の声が聞こえているのかいないのか、晴香はバッグからメイク道具を取り出した。

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