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十月兔

強制女装を中心とした小説・イラストのブログです。

2009-05

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乙女座の園 第0エリア(3)


(3)

 しかしこの社長、これで許すほど甘くはない。自分のロッカーから、白地に薔薇模様のレースや刺繍が施されたショーツとブラジャー、さらにパンストを取り出して言ったものである。
「上から下までよ。中途半端なのが、一番みっともないわ」
 ここまでくれば俎板の鯉だが、さすがに真っ裸は恥ずかしい。しかし相手も容赦なく、
「さっさとしなさい。なんなら、全社員の前で着替えたい?」
 と言われれば仕方ない。トランクスを脱いだ時、さっきまで目を開けていた留美がまたも真っ赤になって目を閉じる。しかし晴香は平然としていた。
「じゃ、まずはショーツね。そっちが前よ」
 レースの装飾が派手なほうが前で、生地がやや広くなっているのが後。それを確認した良介は、片脚ずつ通してゆく。ナイロンのすべすべした肌触りが、すねから太ももにかけて彼の脚をくすぐり、引き上げるとぴったりと下半身を包み込む。何もしなくても意識してしまいそうな、滑らかで、レースや刺繍部分がちょっとちくちくする感覚に、良介は軽く興奮しかけた。
「あら、似合うじゃない。ね、留美ちゃん。もう、目を開けても大丈夫よ」
「ほ、ほんとですか? ……わ、似合ってるぅ。早くも自信喪失です」
 軽口をたたく留美にため息をつきながら、良介はショーツとセットのブラを手に取る。しかし、そこではたと手が止まる。……どうやってつけるんだ?
 それでもとりあえず、むかし付き合っていた彼女がしていたように、ストラップに両手を通し、ホックを背中に回す。そして背中に手を伸ばして、
 届かない。良介は正直に、それを口にした。
「届きません」
「なぁんだ。あっさりブラをつけて見せて、先輩の隠された趣味を発見! とか期待したんですけど」
「仕方ないわね。留めてあげるわ」
 晴香は良介の背中に回りこみ、ホックを留める。サイズを見ていた晴香は、
「ふんふん、Aの75でぴったりと。男性にしては細いわね」
「そうですねー。あ、ストラップ曲がってます」
 留美はひょいと手を伸ばし、良介のブラのストラップを直す。ゴムが縮み、肩でパチンと音がした。彼は、少し赤くなった。
「ふふ、赤くなっちゃって可愛いですね、先輩。次はパンストです」
「座って穿きなさい。つま先によせるように皺をつくってつづめた後、足先を通してフィットさせるの。両方ある程度入ったら、最後に腰までたくし上げて完成」
 言われた通り、椅子に座ってからつま先を底にしてパンストを手の中でたたみこみ、そこに足を入れる。少しずつ皺を伸ばす要領で足にフィットさせ、最後にショーツの上まで引き上げれば完成だ。
 それを見て、女性二人は満足げにうなずいた。そしてこそこそと、良介には判らない会話を交わす。
「似合ってるわね。……ねぇ、ブラウスはどれがいいかしら」
「そうですね……レギュラーカラーの七分丈なんかはシンプルですけど、ちょっとお洒落さに欠けるんですよねぇ。男物でも、あの手の襟はありますし」
「なら、ベルカラーはどう? 女物よ」
「あれはお洒落もありますけど、襟元が苦しくないのが最大のメリットですから……この場合、もっと女の子らしいほうがいいですね。そうだ、スタンドカラーなんかどうですか? あれならフェミニンな感じですし」
「いいわね。でも私持ってないのよ。留美ちゃん持ってる?」
「任せてください! こんなこともあろうかと……ってのは嘘ですけど、フリルのついた可愛いブラウスをもってます」
「なら、決まりね」
 二人はゆっくりと、暗い笑いを浮かべながら、良介のほうを見る。
 ライオンとトラに同時ににらまれたシマウマの子供のように、良介は、びくっとからだをすくませた。

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