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十月兔

強制女装を中心とした小説・イラストのブログです。

2009-06

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乙女座の園 第4エリア


 第4エリア グッズショップ《The Grass Slipper》

 (1)

 翌週の火曜日。午前中いっぱいでシステムのメインテナンスを終えた良介を、またもや社長が呼び出した。
「今日は宣伝部長のところに行って、また色々な服を着てちょうだい」
「何を着せる気ですか、今度は」
 良介はうんざりと答えた。着替えろと言っても、この社長が指定する服だ。普通の服であるはずがない。いや、いま着せられている女子事務服だって、十分に普通じゃないけれど。
「あたしも細かいことは聞いていないのよ。何でも、グッズショップの品らしいんだけど」
「…………、帰って良いですか」
「駄目よ。良いじゃない、似合うんだし」
 全然良くはない。グッズショップで取り扱っている品は、どれを取っても可愛らしい女の子向けのものばかりで、男の身で着せられて、外を連れ回されることを考えただけで憂鬱になってくる。
 例えば、各アトラクションの従業員制服のレプリカ。《Lakeside Swan》や《Sweet Spirits》の衣装も、店頭販売用に若干のアレンジを施されたまま販売されている。また、カテドラル《Bridal Dream》や、レストラン《Princess Party》では、若干値は張るものの、そこで使われている貸衣装と同じものを購入することが出来るようになっていた。こうした商品の売り上げが、実は《乙女座の園》の主要な収入源でもある。
 中でも第4エリアにあるグッズショップは、《乙女座の園》最大の服飾・お土産物売り場だった。
 12時を告げる鐘が鳴り響き、儚く消えたシンデレラの夢。その中で唯一硝子の靴だけが後に残り、そして、それを履けば再び夢は現実になる。そんな思いから付けられたこのグッズショップには、《The Grass Slipper》――硝子の靴、と呼ばれる。
 そんな美しい願いを込めて名付けられたグッズショップだったが、男性である良介にとっては、そこで取り扱われている商品を着用させられると聞いただけでげんなりしてくる。
 それでも反抗など出来るわけもなく、良介は、やれやれと首を振って宣伝部に向かう。入ると、
「おう、来たかりさちゃん。さ、ずいっと入ってくんな」
 相変わらず男前な宣伝部長が出迎えた。
 他の社員が出払っているのはせめてもの救いだったが、いきなり宣伝部長が差し出した服は、良介のそんな安堵を吹き飛ばすような一品だった。
「りさちゃん、早速で悪ぃんだが、コイツを着てくれ」
「ってこれ、こんなのありました?」
 良介は目を白黒させた。彼の手に押しつけられたのは、どう見ても対象年齢10歳以下、中学生でさえ着るのを拒むような、とんでもないセットだった。
 トップスの柄は、ベビー・ピンクとコットン・イエローのチェック。パフ・スリーブと言うよりはちょーちん袖と言った方がしっくり来るような袖の口にはゴムが入れられ、裾は3段のフリルになっている。ボトムスはデニムのサロペット・スカート。ただでさえ幼い印象のサロペットは、裾や肩紐にたっぷりつけられたフリルと、胸元の花形のアップリケのせいで、ますます幼いデザインになっている。
 またしても今度は宣伝部長に更衣室の一角に連れ込まれて、良介は彼女の目の前で、それまで着ていた事務服を脱がされた。それでも普段から女性用下着を身につけさせられているので、下着を剥ぎ取られないだけマシだろう。
 しかしそれは、考えが甘かった。下着姿の良介に、宣伝部長はこうのたまったものである。
「ほれほれ、全部脱げ。下着もだ」

FC2小説にて発表中。

 神無月です。

 現在FC2小説にて、「神有月」のペンネームで、『血』という小説を発表しております。
 そちらは強制女装とか関係なくて、ややスプラッタがかったオカルト・ホラーなのですが、ご興味のある方、よろしければご覧下さい。

 『乙女座の園』は現在詰まり中(汗)。なんかだんだん、アダルトカテゴリじゃなくなってきたような気さえしてきました。今回は大体こんなノリですので、適当に見守ってやって下さい。

 ではでは。次章は既にスタンバイしてますので、乞うご期待。

 

乙女座の園 間章4


 間章4 回転木馬《Merry-go-round》

 昨日ぼくは、お母さんと、お姉ちゃんといっしょに遊園地に行きました。今日はそのときのことを話したいと思います。
 そこは、女の子しか入れないっていう遊園地でした。でもぼくは、お母さんやお姉ちゃんといっしょに遊園地に行きたかったので、連れて行ってもらいました。入口で、小学生はリボンをつければ、男の子でも入れると言われました。頭にリボンをつけて、ぼくも女の子みたいになって入りました。
 中に入って最初に行ったのは、「ふぉとすたじお」っていう、お姫様みたいな服を着てしゃしんをとるところです。お母さんは赤いドレス、お姉ちゃんはシンデレラみたいなドレスを着て、ぼくも水色の、ふりふりしたドレスを着ました。ちょっと変な感じだったけど、可愛かったし、とても楽しかったです。
 そのあと、男の子の服を着たぼくが目立つというので、おようふくを売ってるおみやげ屋さんに向かいました。そこでぼくは何枚か、ワンピースやスカートを買ってもらいました。ワンピースに着替えると、ほんとうに女の子になったような気がしました。
 その後、みゅーじかるをみたり、回転木馬に乗ったりしました。お姫様がけっこんのため、木馬に乗って王子様のところに向かう、っていうものらしいです。真ん中には、お姫様が嬉しそうに微笑んでいました。ぼくもあんな風になりたいな、と思いました。
 ……本当は昨日のことは、こうしてみんなに話すつもりはありませんでした。でも、ぼくが着せられていたワンピースは肩が出ているものでした。だから、そのワンピースのかたちそのままに日焼けの跡がついてしまいました。で、着替えの時なんかに見られて、からかわれるのは嫌だったので、こうして……きょうは、その遊園地で買ったブラウスとスカートを着て、学校に来ました。
 今日からぼく……ううん、あたしは、女の子として過ごします。スカートをはいて、女の子になりたいと思います。
 なので――みんな、これからも、あたしと仲良くしてください!

乙女座の園 第3エリア(5)

 (5)

「ふふ、そうですね。男の子が着ても、きっと可愛らしいアリスになるでしょうね」
 良介はぎくりとしながら、とっさに冗談に紛らした。ギャラリーも、疑問に思った様子はない。ただ単に、このアリス風ワンピースのかわいらしさを強調するだけの台詞ととらえたようだ。
 こうして、多少の不安を抱えながらもトークショーは終了し、最後にギャラリーと記念撮影をして終了。この頃にはもう、21時を回っていた。
 無事に終わったと胸をなで下ろし、奥の控え室でゲスト二人と一息入れていたとき。
 不吉な音を立てて、控え室のドアがノックされた。
「お邪魔するわね」
 入ってきたのは、さやかだった。彼女はなぜか、小学生のようなかわいいデザインの服を着ていた。大きなチェックのキャミワンピの上に、前にも着ていたグレイのパーカーを羽織っている。しかし、服装の子供らしさとは裏腹に、表情は真剣そのものだ。
「緊急事態よ。子どもが、行方不明なの」
「行方不明……って、迷子?」
「ええ」
 さやかは、真面目な顔でうなずいた。
「しかも厄介なことに、その子、大人を警戒してるのよ。小学生なんだけど、どうも入ってすぐにスタッフから怒られたらしいのね。だから、スタッフの着ている制服を見るとすぐに逃げ出すの。だからあたしも、こうして彼女が警戒しないような服を着て、探しに行くところよ」
 さやかはそこまで言った後、言葉を求めるように良介を見た。
 大変だな、とは思ったが、良介は何も言わなかった。この流れは、自分にも手伝えというのだ。しかも、子供服を着て。ただでさえ本来の上がり時間をオーバーして、アリスの格好でお茶会にださせられている。これ以上、子供服を着て園内を駆け回るなんて恥ずかしい真似はごめんだった。
 そうして彼が黙っていると、神無兔がじとーっと冷たい目で見る。浄玻璃もけだるげな吐息を吐きながら、非難するような目を向けた。
 無言の圧力に冷や汗をかきながら、それでも立ち上がろうとしない良介に、やがて神無兔が言った。
「浄玻璃、あたしたちも探してあげましょ。そこの薄情なアリスさんは、行く気がないみたいだもの」
「ええ。女の子を探すのは女王の務めだものね。もちろん、その子の首をちょん切るわけにはいかないけど」
 部外者二人が立ち上がり、夜の園内に消える。さてそうなると、アルバイトスタッフどころか会社の人間である良介が知らんぷりするわけにもいかない。しばらく頭を抱えた後、
「わかったよ、行きますって!」
 言いながら、アリスの姿のまま夜の園内に駆けだす良介。さやかが後ろから、
「ちょっと! 着替えたほうがいいわよ!」
 とか言っていたが、そちらは無視した。この機に乗じて恥ずかしい子ども服を着せられてはたまらない。ぽっかりと三日月が浮かぶ園内に駆けだした良介は、子供をさがして園内を歩き回った。
 ……しかし、アリスの服装というのは思ったより目立つ。しかも来園者は、明日以降に開かれる《Alice in Waterland》のことを知っている人ばかりなので、彼がそうしてアリスの服で歩いているのを、てっきり明日以降のイベントの前振りだと思うのだ。記念撮影をせがまれたり、呼び止められたりして、子供を探すどころではない。
 結局彼は、その子供が浄玻璃によって発見されてから1時間以上、閉園時間になるまで、園内のお客さんから記念撮影を求められ続けていた。

乙女座の園 第3エリア(4)


(4)

「あら、お兄さんがアリスなのね」
 《アリスのお茶会》打ち合わせの場で互いの自己紹介をすませた直後、ゲストの少女が軽い調子でそう言った。
 良介は硬直した。いま着ているこの服は、スカートが大きく広がり、体型がかなりごまかされる一品。しかもここ1ヶ月以上にわたり女性として振る舞い、挙措もかなり女性として違和感のないものになっていると思っていたのに、この少女は、一見して見抜いたのだ。
 そんな彼に、中学生くらいのロリィタ少女はくすくすと笑った。彼女が着てるのはいわゆる白ロリで、真っ白い姫袖のワンピース、背中には大きなリボンが結ばれ、スカート部分の前にはレースで縁取りされたエプロンが垂れている。スカートは軽やかなフリルが広がり、リボン通し風のプリントが入ったニーソックスと、ピンクの厚底サンダルが可愛らしい。頭につけているのは、耳のような飾りの付いたボンネットだ。
 彼女は、神無兔と名乗っていた。神無兔はくすくす笑いながら、
「隠さなくても良いわ。似合ってるし、アリスが女の子とは限らないもの」
 そう言われても、男性だとばれていると落ち着かない。その心情を察したのか、もう一人のゲストが神無兔をたしなめた。
「神無兔。からかうのは程々に、ね」
 そう言った彼女の名は、浄玻璃。彼女はやや年齢不詳で、20代後半から30代後半まで、いくらにも見える。こちらは赤ゴスというのか、深紅のベルベットでできた豪奢なドレスで、スカートは膝の辺りでドレープになっており、その下にはカーテンのようなひだが大量についたスカートが足もとまで覆っている。上半身は黒いレザーのベルトで腹部を何カ所も縛り、編み上げからのぞく胸元を大きく開けて強調している。肩は完全に露出させ、二の腕までを覆う黒いレースの手袋をつけていた。
 煽情的ではあるが、男性の目を意識したものではない。むしろ、女性としての自らの魅力を強調するかのような「衣裳」だった。
 二人は原宿の片隅にあるロリィタショップ《十月兔》の店主と、店員とのことだった。もちろん浄玻璃が店主だ。浄玻璃は吐息を絡めた頽廃的な口調で、
「ごめんなさいね。この子、そういうのすぐに判る方なの。それに、純粋に褒めてるのよ。だから気にしないで」
「あ、いえ。ただ、これからのトークショーの時には、男性だって言わないでくださいね」
 一見ものすごい格好をした浄玻璃の方が、良識的なことを言う。良介はちょっと安心した。
 それに2人を見ていて、良介はやっと気付いた。そうか。この2人は、『アリス』の中で重要な役割を果たす「ウサギ」と「女王」か。そして自分が――「アリス」だ。女性2人を前にして、男性である自分が「アリス」なのかと、良介は少し落ち込んだ。
 そんな彼を見て、神無兔は嬉しそうに笑う。良介が男と知っているのが自分たちだけであるという、ちょっとした共犯者意識が楽しそうだ。
「もちろん、ばらしたりなんてしないよ。アリスは夢を見て、夢を見せるものだもの。現実なんて無粋なものを持ち出すのは野暮の極みね。でも、ちょっとした現実の欠片を覗かせるのは好き。風刺を用いたルイス・キャロルの好みに合うんじゃないかしら」
「まぁ、その辺りはトークショーの時か、その後にでも話すとして、打ち合わせをしましょう。テーマは確か『夢』ですけど」
 良介は彼女の言葉に取り合わず、話の軌道をそらす。浄玻璃が肯いて、
「そうね。でも、アド・リブで何とかなるし、何とかするわ。神無兔がよほど変なことを言わなければ」
「酷いわね、浄玻璃。……お兄さんも、悪夢だと思って早く目覚めることばかり考えていないで、どうせなら夢の中を楽しんだ方が良いわよ」
 神無兔はにっこり笑って言う。良介は内心で、ぎくりとした。彼女の洞察力は、年若い少女と侮れないものがある。
 そしてついに、問題のトークショーの時間になった。良介は大勢の女性に見られて恥ずかしがりながらも、司会兼主役を無事に務め、ほかの2人も良介の正体をばらすことなく、無難ながら機知に富んだやりとりに終始した。
 こうして無事に終わるかと思われたとき、最後の最後になって神無兔がこんな事を言いだした。
「本当にこのアリスのお洋服、とっても可愛いですよね。男の子が着ていても、女の子に見えるんじゃないかしら。ねぇ、このアリスさんも、もしかしたら男の子かも知れないわよ?」

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