2ntブログ

十月兔

強制女装を中心とした小説・イラストのブログです。

2009-06

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

乙女座の園 第3エリア(1)

 どうも、神無月です。

 最近いろいろと思うところがありまして、「強制女装」というジャンルを見つめ直してみたいなという気持ちが強くなってきています。
 何故「強制的に女装させられる」事に対して、喜び、あるいは屈辱を覚えるのか。
 そのあたりを考えないまま、色々と「強制女装」にカテゴライズされる作品を書き散らしてきていたので、ここで一つ、見つめ直すのもいいかな、と思います。

 あ、「乙女座の園」はきちんと終わらせるつもりなので、そちらはご安心下さい。ですが、「乙女座の園」でも、「強制女装」そのものについて考えて見たいと思いますので、今後ともよろしく。

 前置きはこのくらいにして、それでは開幕っ。

 * * *

 第3エリア ミュージカル《Alice in Waterland》

(1)

 自宅マンションに帰り着いたとき、良介はぐったりと玄関に伏した。
 《Lakeside Swan》の添乗員を行うこと3日。最近では女子高生ではなく、会社本部から派遣された社員として《乙女座の園》で働いている。そのため彼は、今日もボウタイ付きブラウスにグレーのプリーツスカートとジャケット、というOLスタイルで通勤している。
 ここまで強制されれば自分でもある程度気を使わなければみっともない。いや、みっともないのは良いが、男だとばれると色々困る。そんなわけで、最近では髪にスチームアイロンをかけてウェーブをつけたり、化粧をしたり、クレンジングや化粧水にも気を使ったり……と、本当に女の子のような気の使い方である。
 しかし自分は男であり、こんな女性のような格好をしていると違和感を覚える。こうして家に帰ってくると、「まずは男に戻らなくちゃ……」という感覚に陥るのだ。
「あー、疲れたぁ……」
 完全に男モードで、良介はハイヒールを脱ぎ、廊下に上がる。ジャケットを脱いで部屋のハンガーに掛け、お風呂にするか、食事にするか悩んだ後、食事をすることに決める。……これだって、かなりの進歩だ。留美によってOLの通勤スタイルを強制されて数日は、帰宅したらまず最初にすべて着替え、化粧を落としてからでないと、食事をする気さえ起きなかったのだから。逆に、だんだん慣れていく自分が怖い。
 朝のご飯の残りをレンジにかけ、肉屋で買ったコロッケと、即席のコンソメスープを出す。箸を付けようと思ったところで、携帯電話の着メロが鳴った。
 ハンガーに掛けたジャケットから携帯をとりだして、蓋を開ける。画面を見ると、電話番号は表示されているが、名前は出ない。だれだろう。とりあえず通話ボタンを押して、電話に出る。
「はいもしもし、有沢ですが」
 最近では、外で女装しているときに電話がかかってくると、本当に女の子のような声を出して受け答えする癖がついていた。
 それを考えると、家にいるときにその電話がかかってきたのはまさに僥倖だった。何せ相手は、
「もしもし。あたし、月織だけど……、って言って、判る?」
「あ……お久しぶり。うん、判るよ」
 月織円香。数日前に《乙女座の園》で邂逅を果たし、しかし良介は正体を明かさぬまま、他人のふりを貫いた相手。いくら仕方のないこととはいえ、ちょっと後ろめたい。
 同時に、いま彼女と電話越しに話している自分が、フェミニンなOLの通勤スタイルで、化粧も落とさぬまま食事をしていることに、強い背徳感を覚えた。
 それでもあえて何事もないかのように、良介は話を続ける。
「久しぶりだね。去年の追いコン以来かな? 元気だった?」
「ええ。元気よ。……ねぇ、有沢くんはいま、何してるの?」
「うーん、小さなイベント企画会社にいる。小さなところだけどね」
 月織さんは? と尋ねようとしたところで、さらに彼女から質問がとんだ。
「なら、《乙女座の園》って知ってる? 最近オープンしたテーマパーク。神奈川県にある」
「い、あ、もちろん。凄い人出だったらしいね。初日からかなり繁盛したらしいよ。うちの課長も悔しがってた。大型連休、あっちにだいぶ人をとられたから、うちで組んだ企画の来場者が、予想を下回っちゃったんだ」
「それは残念ね。あたしもそこに行ったくちだから、あまり言えないけど」
 くすくすと、円香は笑った。昔と変わらぬ、玲瓏たる声だ。
「で、そこでね。有沢くんによく似た人を見かけたのよ。だからどうしてるかなって、少し気になったんだけど」
「そ、それはどうも。……あれ、っていうかあのテーマパーク、確か男子禁制でしょう?」
「あら。……よく知ってるわね」
 円香の声が、少し低くなる。良介の背筋が、ぞっと寒くなった。

 | HOME |