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10000hit記念(2)
神無月です。
話が長くなるのは悪い癖……。こちらはちゃんと着地点を見極めていますので、前のようなことにはならないかと思います。
(SS2)
「さ、ついていらっしゃい」
「はぁい」
終業後。チェックのワンピース姿で、僕は社長の後を追う。オフィスから代々木駅に向かって歩くと、通りすがる人の目が、吸い寄せられるように僕に向かうのが判った。
それはそうだろう。160センチもある人が、こんな、一昔前の小さな女の子が着るような服を着て歩いているのだ。しかも背中には、ピンクの子供用リュック。割と女顔だし、化粧でそこそこごまかしているので、男だとまではばれていないだろうけど、それでも「いい年した女性が小さい女の子の服を着てる」と思われているのは間違いなかった。
どこに向かうのだろう。僕は不安で一杯だった。この前連れて行かれたのは秋葉原の一角で、「リアル女装少年」としてヲタクたちからカメラを向けられる目にあった。その前は都心の一角にある子供服ブランドの本店で、しかも「これでも高校を出た男なんだけど、この子にあう服はないかしら」と、僕の年齢や性別をばらした上で、店の中でも一番可愛い服を着せられて購入、そのまま山手線を引きずり回された。
ささやかな失敗の罰としてはあまりにもひどすぎる仕打ちだったが、僕にはもう逃げ場所がないのも、また事実だった。
「何怯えてるの。そんなに私が怖い?」
ええとっても、とは言えず、僕は愛想笑いを返す。
「そんなことないよ、お姉ちゃん!」
「なら、もっと楽しそうな顔をしていてちょうだい。弓野良太郎君」
「やっ……!」
弓野良太郎。どう聞いても男性のものであるその名前は、他ならぬ僕のものだ。この、赤いチェックのワンピースを着て、小さな女の子みたいに振る舞っている、この僕の。
それでも強くは言い返せない。周りに聞こえたら、その方が恥ずかしいのだ。僕はあくまで愛想笑いを浮かべながら、慎重に口をつぐんだ。
社長は僕を連れて代々木駅から山手線に乗り、新宿へ。そしてそのまま中央線から、お茶の水で下車する。
嫌な予感がした。これまでとは比べものにならないくらい、嫌な予感がした。僕は社長に引きずられるようにして、御茶ノ水駅のホームを歩き、聖橋方面に向かう。
そして改札を抜けたとき、僕は愕然と凍り付いた。
そこにいたのは、僕の高校の頃の同級生達だった。ほとんどが大学生で、少しスーツ姿も混じっているが、いずれも見知った顔ばかり。そのみんなに、今の僕の姿を見られるなんて。
逃げようとした途端、僕は手首を強く掴まれた。
「や、やぁッ!」
思わず叫び声を上げる。途端に、同級生達がぐるりとこちらを見て、
彼らと、目が、合った。
話が長くなるのは悪い癖……。こちらはちゃんと着地点を見極めていますので、前のようなことにはならないかと思います。
(SS2)
「さ、ついていらっしゃい」
「はぁい」
終業後。チェックのワンピース姿で、僕は社長の後を追う。オフィスから代々木駅に向かって歩くと、通りすがる人の目が、吸い寄せられるように僕に向かうのが判った。
それはそうだろう。160センチもある人が、こんな、一昔前の小さな女の子が着るような服を着て歩いているのだ。しかも背中には、ピンクの子供用リュック。割と女顔だし、化粧でそこそこごまかしているので、男だとまではばれていないだろうけど、それでも「いい年した女性が小さい女の子の服を着てる」と思われているのは間違いなかった。
どこに向かうのだろう。僕は不安で一杯だった。この前連れて行かれたのは秋葉原の一角で、「リアル女装少年」としてヲタクたちからカメラを向けられる目にあった。その前は都心の一角にある子供服ブランドの本店で、しかも「これでも高校を出た男なんだけど、この子にあう服はないかしら」と、僕の年齢や性別をばらした上で、店の中でも一番可愛い服を着せられて購入、そのまま山手線を引きずり回された。
ささやかな失敗の罰としてはあまりにもひどすぎる仕打ちだったが、僕にはもう逃げ場所がないのも、また事実だった。
「何怯えてるの。そんなに私が怖い?」
ええとっても、とは言えず、僕は愛想笑いを返す。
「そんなことないよ、お姉ちゃん!」
「なら、もっと楽しそうな顔をしていてちょうだい。弓野良太郎君」
「やっ……!」
弓野良太郎。どう聞いても男性のものであるその名前は、他ならぬ僕のものだ。この、赤いチェックのワンピースを着て、小さな女の子みたいに振る舞っている、この僕の。
それでも強くは言い返せない。周りに聞こえたら、その方が恥ずかしいのだ。僕はあくまで愛想笑いを浮かべながら、慎重に口をつぐんだ。
社長は僕を連れて代々木駅から山手線に乗り、新宿へ。そしてそのまま中央線から、お茶の水で下車する。
嫌な予感がした。これまでとは比べものにならないくらい、嫌な予感がした。僕は社長に引きずられるようにして、御茶ノ水駅のホームを歩き、聖橋方面に向かう。
そして改札を抜けたとき、僕は愕然と凍り付いた。
そこにいたのは、僕の高校の頃の同級生達だった。ほとんどが大学生で、少しスーツ姿も混じっているが、いずれも見知った顔ばかり。そのみんなに、今の僕の姿を見られるなんて。
逃げようとした途端、僕は手首を強く掴まれた。
「や、やぁッ!」
思わず叫び声を上げる。途端に、同級生達がぐるりとこちらを見て、
彼らと、目が、合った。