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「乙女座の園」 了
神無月です。
予定より大幅に遅れましたが、『乙女座の園』は本日の「終章」を持ってお終いです。お付き合い下さった方々、ありがとうございます。
蛇足ですが、「乙女座の園」について若干ふれます。
「女装を恥ずかしいと思うことは、女性への蔑視を前提としているのではないか」。これが今回のテーマです。「女装」という感覚や、男性が女性の服を着るのを「男らしくない」「恥ずかしい」と考える発想には、男性/女性という弁別だけではなく、男性を上位に置く思想が存在するのではないか、と。
もちろん女装に憧れる方や、女装者の場合、大なり小なり女性化願望があるがゆえに女装を指向する場合が多いようです。ですから、彼らが無意識に女性差別に加担しているのだ、というのは極論です。しかし、「女装SM」といい、「女装させられることを屈辱と感じる」表現をする以上、このテーマについて考えずに書くわけにはいかない、と思いました。「乙女座の園」は、そのような考えのもとに書かれています。
なぜ男性は、女装を恥ずかしいと思うのか。そしてなぜ、一部には、強制的に女装させられるテーマを求める人がいるのか。
女装にみるジェンダー論というのは寡聞にして聞いたことはありませんが、女装はジェンダー問題と深く結びつく現象です。いずれ論攷のようなかたちで、このテーマについて触れてみたいな、と思います。
みなさまからも、ご意見、ご感想、ご批判などあれば、遠慮なくお寄せ下さい。
予定より大幅に遅れましたが、『乙女座の園』は本日の「終章」を持ってお終いです。お付き合い下さった方々、ありがとうございます。
蛇足ですが、「乙女座の園」について若干ふれます。
「女装を恥ずかしいと思うことは、女性への蔑視を前提としているのではないか」。これが今回のテーマです。「女装」という感覚や、男性が女性の服を着るのを「男らしくない」「恥ずかしい」と考える発想には、男性/女性という弁別だけではなく、男性を上位に置く思想が存在するのではないか、と。
もちろん女装に憧れる方や、女装者の場合、大なり小なり女性化願望があるがゆえに女装を指向する場合が多いようです。ですから、彼らが無意識に女性差別に加担しているのだ、というのは極論です。しかし、「女装SM」といい、「女装させられることを屈辱と感じる」表現をする以上、このテーマについて考えずに書くわけにはいかない、と思いました。「乙女座の園」は、そのような考えのもとに書かれています。
なぜ男性は、女装を恥ずかしいと思うのか。そしてなぜ、一部には、強制的に女装させられるテーマを求める人がいるのか。
女装にみるジェンダー論というのは寡聞にして聞いたことはありませんが、女装はジェンダー問題と深く結びつく現象です。いずれ論攷のようなかたちで、このテーマについて触れてみたいな、と思います。
みなさまからも、ご意見、ご感想、ご批判などあれば、遠慮なくお寄せ下さい。
乙女座の園 終章
終章 宴のあと
「あら、おはよう……って、どうしたの有沢君」
「おはようございまぁす……って、どうしたんですか社長」
明けて、月曜日。
出社してきた有沢良介の姿を見て、黒谷晴香は絶句した。同様に、出社してきた良介も、社長の姿を見て絶句した。
まず、良介。
「ああ……これですか? 実は私、このたび婚約することになりまして、まだ婚約も正式に決まったわけではないんですけど、相手が、こういう服を着ている方が喜ぶものですから」
「……えーと、婚約って……? 相手は、その……」
「もちろん、女性ですよ。男とは婚約できませんからね」
珍しいほどあっけにとられた表情の晴香に、良介はすまし顔で答える。
出社してきた良介が着ていたのは、ノースリーブのブラウスにノーマルスカート。足元はヒールのついたパンプスで、キャリアウーマン風のいでたちだ。メイクもばっちり決まっている。
どう見ても女性としか見えない良介の姿から考えれば、「男と婚約した」と言われた方がよほどしっくり来るのだが、どうもそうではないらしい。晴香は微妙な表情で、頭を掻いた。
晴香の質問が途切れたところで、今度は逆に、良介が晴香に問いかける。
「それにしても、社長もどうしたんです? 何やら、ずいぶん可愛い格好ですけど」
「……ありがと。でも、有沢君に言われると微妙ね」
そして、黒谷社長。
いままで黒のパンツスーツばかりで、スカートはおろか女性的なラインのブラウスさえ、着ているのを見たことがなかった黒谷社長。しかしいまの彼女は、フレンチ袖のピンタックブラウスに、細かいプリーツの入ったシャンペンゴールドのスカートという、いかにも女性らしい服装だったのだ。
良介の指摘を受けて苦笑いしながらも、晴香は優しい口調で説明しはじめた。
「ちょっとした心境の変化よ。これからは、肩肘張って男らしくするの、やめようと思ってね」
「へぇ……」
結局この社長が、「女装」に対して何を思っていたのか、聞くことはできなかったし、今回のことが一体どういう心境の変化なのかも、まだ話す気はないようだ。
そのうち聞く機会もあるだろう、と思いながら、良介は小さく笑った。
「でも、そういう服も似合ってますよ、社長」
「ありがと」
二人が笑みを交わしたとき、「B&B」事務所に留美が入ってきた。彼女は特ダネを掴んだジャーナリストのように叫びながら、
「大変ですっ、社長っ! 有沢先輩が昨日カテドラルで結婚式を……」
飛び込んできた留美を見て、晴香と良介はくすくすと笑い交わした。
季節は夏。「B&B」は新しいプロジェクトに向けて、ふたたび動き始める。
Fin.