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十月兔

強制女装を中心とした小説・イラストのブログです。

2009-09

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乙女座の園 第8エリア(1)


 第8エリア カテドラル《Bridal Dream》

 (1)

「良介は、全然違う。あの店でも、人に見られて、それを喜びにしているように見えた。だから、あたしとは全然違うんだよ」
 円香は微笑みながら、そう言った。しかし、
「でも俺だって、好きこのんでああいう格好をしているわけじゃ、無いよ」
 良介は食い下がった。確かにいまの話を聞いて、円香に対する見方は大きく変わったが、それでも自分は「あの」姿、《Sweet Spirits》の制服を着て働くのが好きというわけではない。
 円香は不思議そうな顔で、
「なんで? すごく似合ってるし、良介が活き活きしてたのは、あれが気に入ったからじゃないの?」
「違うってば。大体、すごく恥ずかしいし」
「別に、いつもあんな露出の多い服を着ろとは言ってないよ。普段着だけでも、ごくごく普通の女物にすれば良いじゃない。タンクトップとか、膝丈スカートとか」
「でもさー……」
 それでも嫌がる良介に、円香は少し眉をひそめた。
「ねぇ。なんでそんな、女性用の服を着るのを嫌がるのかな?」
「なんで、ってそれは恥ずかしいからに決まってるよ」
「なんで恥ずかしいのさ? 良介が女装してても別に見苦しくはないし、それどころか男物の服を着ているときより似合っているくらいだ。しかも、それを着ている良介はとっても活き活きしている。まるで、いままで良介を縛っていた色々なものから、解放されたよう。ちょうど、あたしがこうして本当の自分に戻ったみたいにね」
 円香は自分の胸に手を当てる。彼女の話を聞きながら、良介は、話の流れこそ違うけれど、円香も黒谷社長と同じようなことを言ってるな、と思った。
「あたしだって、大学のころは自分の強迫観念に縛られてた。でも、いまは違う。こうやって割とラフな格好をして、男相手にもずばずばと気取らない返事をする、本当の月織円香さんだ。そのあたしを、変だと思う?」
「いや、それは思わないよ。むしろ大学のころより話しやすいし、面白いし、何より円香自身がリラックスしている感じで、見ている方も落ち着くから」
「なら良介が女性の服を着るのも、そっちの方が活き活きして魅力的なんだから、全然問題はないでしょーに」
 ここで円香は、怒ったような顔をした。
「なんでそんな、女性用の服を着るのを嫌がるの? あるいは、女として見られることを嫌がるの?」
「えっと、その……恥ずかしいじゃん、やっぱり」
「だから、なんで?」
 水掛け論だ。理屈ではないのだが、円香はぞんがい理屈っぽく、良介に対して明確な回答を求めてくる。彼女は言った。
「もし、男が女の服を着ることそのものが恥ずかしい、なんて考えているんだったら、はっきり言っておくよ。女をバカにするのもいい加減にしろ、ってね」
「な……!」
 良介は絶句した。あまりにも、思っても見ないことだった。

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