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十月兔

強制女装を中心とした小説・イラストのブログです。

2009-03

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体験入学 第二章(2)

 神無月です。
 ゆうゆさん、コメントありがとうございます。イラストをご期待下さって嬉しいです。
 いずれイラストもつけたいと思っているのですが、なかなか……とりあえず、作品を書くに当たって描いた深山小学校附属幼稚園の制服のラフ絵を置いておきます。
seifuku1_s.jpg
 前プリーツは四枚、後ろプリーツは二枚で、椅子に座るときにプリーツがしわになりにくいデザインです。前のくるみボタンも、後ろのリボンと同じチェック柄。

 それでは本日も、小説をどうぞ。

 * * *

 (二)

 ところがここで、一悶着あった。
 一人の保護者が、先生の方に近づいて何やら問答し始めたのだ。ちらちらと武生の方を見ているところを見ると、「なんでこんな身体の大きい子がいるのか?」ということについてだろう。先生は何か説明し、前に来ていた保護者は後ろに戻る。あんな短い間に説明が終わったとは思えなかったが、その理由はすぐにわかった。先生は不意に手を叩いて立ち上がり、こう言ったのだ。
「皆さん、よろしいですか。いま保護者の方からご指摘がありましたので、説明をいたします。ご静聴下さい。その指摘というのは、こちらにいらっしゃる」
 彼女は、武生を示す。半ば予想していたこととはいえ、武生は焦った。
「こちらの子が、体験入学を受けるには大きすぎるのではないか、ということです。……こちらのお子様は、確かに本来ならば中学校に通っている年齢です。しかし、学校での授業について行けないから、この深山小学校で一からやり直したいという本人の希望で、幼稚園児として体験入学にご参加下さいました。皆様のご理解をお願いいたします」
 先生がそう言い終えると、保護者は納得したように、それでも尽きせぬ好奇の視線を向けたまま、武生のほうを眺めている。武生はさらにいたたまれなくなった。
 しかも本来なら、彼は中学生の女子ですらないのだ。高校三年生の男子が中学生の女子といつわって、しかも幼稚園児の中にいる。中学生の女子として、小学生の体験入学を受ける屈辱を味わいながら、さらに本当のところを突き詰めればそれ以上の辱めを受けている。武生にとっては二重に屈折した、とても耐え難い恥ずかしさだった。
 だがそれも、長くは続かなかった。授業開始のチャイムが鳴ったからだ。チャイムが鳴り終えると同時、先生は高らかにこう言った。
「Hello, Everyone!」
「Hello, Teacher!」
 いきなりだった。先生は英語でみんなに挨拶をし、子どもたちはそれに英語で答える。とっさに何が起こったか判らず、武生はきょろきょろと周りを見回した。
 先生はにっこり笑顔で、武生の方を向くと、英語でこう言った。
「(みんな、いい子ね。でも、そこの女の子がついて来れなかったみたいだから、もう一度やりましょう?)」
「(はい、先生!)」
 他の子供は、先生の流暢な英語を難なく聞き取って、受け答えする。武生にとっては信じられない光景だった。もう、ついていくどころではない。誰が何を言っているのかさえ判らない。
 しかも授業は、完全に英語だけで行われるようだった。そんな話は全く聞いていないが、そんな武生の思惑を無視して、授業はどんどん進んでいく。
「(ついでに、私の名前も教えましょうね。私の名前はアカネ。これからはアカネ、って呼んでね? じゃ、もう一度行くわよ? そこの女の子も、ちゃんとついてきてね?)」
「い、いえす!」
 いきなり目を向けて疑問系で言われた武生は、思わずそう答える。発音も無茶苦茶な、ひらがな英語だ。後ろのお母さん方が失笑し、子どもたちも何かいやな笑いを浮かべた。自分より格下の存在を見つけたときの笑みだ。
 アカネは気を取り直し、改めてみんなに呼びかける。
「Hello, Everyone!」
「Hello, Akane!」
 子どもたちに合わせ、なんとか武生もついていく。今度は上手く行ったようだが、発音の堅さが目立ってやはり失笑を買った。
「(それじゃみんな、まずは一人一人、自己紹介してもらえるかな? 一緒に、何に興味があるのかも教えてくださいね。……まずは前の席の君から)」
「(はい、アカネ先生!)」
 アカネから指名されたのは、右手のほうの席に座っている、利発そうな男の子だ。深山小学校附属幼稚園の男子制服である、クリーム色のハーフパンツとベストををきっちり着こなしている。
「(僕の名前はオオクニスズヒコです。スズと呼んでください。好きなものは野球とスモウ。将来は、野球の選手になってメジャーリーガーを目指したいです)」
「(スモウとは渋い趣味ですね。でも、素晴らしい夢ね。ありがとう、スズくん。……じゃあ次、その隣の女の子ね)」
 次に指名されたのは、モノトーンの上品な制服を着た女の子。
「(はい、アカネ先生。私の名前はマイハラサトミです。みんなからはさっちゃん、って呼ばれています。好きなものはピアノと、演劇に興味があります)」
 このあとも、次々に子どもたちは答えていく。みんな流暢な英語で、武生にはほとんど聞き取れなかった。それでも他の子どもたちは判っているのか、うんうんと肯いている。そしていよいよ、彼女が武生の方を向いた。
「(じゃあそこの子、挨拶してくれるかな?)」
「あ、あ……」
 そして。

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