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十月兔

強制女装を中心とした小説・イラストのブログです。

2009-03

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体験入学 第一章(6)


 (6)

「さて、次はジャンパースカートですね」
 店員はクリーム色のジャンパースカートを、武生に手渡した。ベストとスカートが一体になったデザインで、スカートの裾にはブラウスと同じ、上品なブラウンのラインが入っており、その下からレースの付いたペチコートがのぞいていた。どうやら、スカート部分の裏に縫い込まれているようだ。
 さらに腰の左右から、幅広で、本体のクリーム色をやや濃くした色合いを基調とするチェック柄のリボンが伸びていた。そしてベスト部分には同じ柄の布でくるまれた、4つのくるみボタンが付いている。
 前のくるみボタンを外して着ようとした武生は、そのボタンが飾りなのに驚く。ひっくり返して背中を見ると、コンシールファスナーの先端が、襟首にのぞいていた。さらにファスナーの上の方、襟首に一番近い位置に、小さなホックも取り付けられていた。
 ホックを外し、じぃーっ、という音とともにファスナーを下ろす。背中を広げ、片脚ずつスカートを穿く感覚は、武生にとっては初めてだった。床に着いたスカートの裾が広がるため、これを踏まないように注意しなくてはならない。特にスカートの下に縫い込まれているペチコートが、内側に広がるため、ちょっと油断するとたちまち踏んづけそうになるのだ。
 スカートを穿き、そのまま上着を持ち上げる。そしてベストの袖口に腕を通し、肩紐を肩に引っかける。……ここまではよかったのだが、これから後ろのファスナーを閉めるのは、事実上不可能だ。襟首のホックを留め、ファスナーを上げようとしたものの、背中の半ばまで来たところで止まってしまう。いくらじたばたしても無駄だ。
 気付けば、先ほどからそんな様子の武生を、女性二人が面白そうに眺めている。武生は顔を赤くして、どうせ言っても無駄だろうと判りながら、思わずこう言った。
「見るなよっ!」
「……そう、判ったわ」
 意外なほど素直に、翠は背中を向けた。店員も、カーテンを閉めてしまう。
 かえって驚いた武生だったが、すぐに彼女たちの意図に気付いた。……武生一人では着られないのだ、この制服は。お坊ちゃま、お嬢様幼稚園のデザインで、子供自身の着脱のしやすさよりも、見た目と、子供が勝手に脱いだりできないようにすることを重視しているのだ。
 武生は唇を噛んだ。今すぐこの場でこの制服を脱いで、ここから飛び出していきたい衝動に駆られたが、そんなことをすればこれから先どうなるか、考える程度の冷静さはあった。武生は屈辱にさいなまれながら、外に声を出した。
「……その、手伝ってください」
「あら、見なければ手伝えないわよ」
「…………っ!」
 翠のつれない返事に少し泣きそうになりながら、武生は声を震わせる。
「見ても良いから……その、手伝って……」
「そう、なら開けるわね」
 開けたのは店員ではなく、翠だった。にぃっと笑い、わざとらしく尋ねる。
「で、手伝うって言っても、あたしはどうすればいいの?」
「……ファスナーを、上げて……」
「ファスナー? どこの?」
 わざとだ。わざと武生の口から言わせて、辱めようとしているのだ。それが判っていながら、武生には彼女の意図に従うしか、道は残されていない。
「ジャ、ジャンパースカートの、背中のファスナーを……」
「ふぅん。高校生の男の子が、幼稚園の制服のファスナーを上げてくれって頼むなんて、よっぽどこの制服を着たいのね。……いいわよ、後ろ向いて」
 顔を真っ赤にして後ろを向く武生。その背後に立った翠は、大きな音を立ててファスナーを上げていく。

 もはや一人で脱ぐことさえ叶わないジャンパースカートのファスナーが、翠の手で、ゆっくりと閉じられていった。

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