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十月兔

強制女装を中心とした小説・イラストのブログです。

2009-03

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体験授業 第一章(7)


 (7)

 ジャンパースカートを着るには、まだ仕上げが必要だった。
 腰の両脇についた、幅広のチェック柄リボンだ。これは背中側で蝶結びをして、ウェスト部分を押さえると同時に、可愛らしいアクセントにするものだ。しかし後ろ手に、左右のバランスを整えた綺麗な結び目を作るのは難しい。ここでも武生は、ファスナーと時と同様に、「ジャンパースカートのリボンを結んでください」と言わされた。
 ファスナーを閉じ、リボンが結ばれると、ジャンパースカートのラインがくっきりする。ペチコートが入っているのでスカートの裾は軽やかに広がり、きゅっとしまったウェスト部分との対比が美しい。リボンの両端はわずかにスカートの下まで垂れ下がって、この上なく上品なアクセントになっていた。
 もう一つ、この幼稚園の制服の可愛らしいアクセントは、襟元に結ぶリボンだ。女子高生がつけるようなホックで留めるタイプではなく、柔らかな深紅のリボンをネクタイ結びにする。リボンの終端には丸い縁飾りがついていて、他の部分より少し幅広になっていた。そのため、襟元で美しく広がる。
 武生にとっては普段慣れているネクタイ結びだったが、そのネクタイ結びさえも難しい。ネクタイと違って短いのもあるし、結んだときに前に出る終端に、扇のような広がりと、美しいひだをつけなければならないのだ。四回ほど結び直して、やっと店員から合格をもらった。
 その上から羽織るのは、すぼまった袖の縁に濃いブラウンのラインが入った、半袖のボレロ。ボレロの袖は絶妙な長さで、下から僅かにブラウスの白い袖口が覗くようになっている。仕上げに白いボンボンの付いた、クリーム色のベレー帽をかぶり、白いレース付きのソックスをはけば、深山小学校附属幼稚園の可愛らしい制服姿の完成だ。
 しかも、身長一五二センチの武生に着せられたのは、一六〇サイズの制服。つまりそれは、
「あら、だぼだぼで可愛いわね。サイズが大きいのかしら」
 翠が笑う。そう、店員があえて大きめのサイズを持ってきたため、その制服は武生の身体にフィットしていないのだ。ジャンパースカートは、リボン結びしてあるウエスト部分以外はあちこちに余裕があるし、ボレロも肩の部分に大きくふくらみがある。しかしそのゆったりした制服は、武生をよりいっそう幼く見せていた。
 唯一短いのは、スカートの丈だ。軽く、膝がのぞくくらいの長さ。こんな所だけ……と、武生は軽く唇を噛む。
「良くお似合いですわ、お客様。……どうでしょう、せっかく採寸いたしましたけれど、少し大きめの方が可愛いと思われます。このままでよろしいんじゃないでしょうか」
「……うーん、そうね。でもせっかくだし、この子の体型にぴったりしたものをつくって欲しいわ。彼のために作られた制服って言うのも、とても良いと思うし」
「そうですね。かしこまりました。ネームはお入れいたしますか?」
「もちろん、あと……」
 女性二人が、彼を辱めるための会話を繰り広げる中、武生は呆然と鏡を見ていた。
 小柄、童顔、女顔。高校生とは思えない、中学生みたい、妹さんよりも女の子っぽく見える……。いままで色々な人から様々なことを言われてきたが、自分では早く背が高くなって、大人になりたいと思っていた。女顔と言われても、女装する気はないと反発するだけだった。
 しかしこうして女の子の服を……それも、幼稚園児が着るような服を着ても、さほど違和感のないことに、自分でも驚いていた。確かに髪の毛は少し短いが、ベレー帽に隠れてあまり目立たない。
「あらあら、この子、自分の姿に見とれてるわよ」
 翠がくすくす笑って言う。誰がこの子だ、と言おうと思ったが、先ほど見た自分の姿が脳裏をよぎり、反論のしようがなくなる。確かにこれでは、「この子」と言われても仕方ない。
「……いいから、着替えさせてよ。もう試着は終わりでしょ?」
 武生は精一杯冷たい声で云う。しかし翠はくすくす笑ったまま、
「まだよ。色々小物を揃えないとね。靴とか、バッグとか。……そんなわけで、行くわよ」
「ま、待ってよ!」
 翠は自分と彼の鞄、両方を手に持って、この部屋から店の中に戻っていく。店員もそれに続き、武生は一人室内に取り残された。彼が着てきた制服は、この部屋にはない。翠が彼の鞄の中に入れて、持って行ってしまったのだろう。どのみちあったとしても、ひとりでは着替えられないのだが。
 ここにいても埒は明かない。武生は他の客が来ていないことを神様に祈りながら、店のほうに向かっていった。

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