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十月兔

強制女装を中心とした小説・イラストのブログです。

2009-10

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『女児転生』 第一章(3)

 (3)

 莉子がそれに乗じて、
「わぁ、良かったね、山野君!」
「やったな、タケシ!」
「おめでとう、山野君!」
 続けざまに、周りから無責任な野次が飛ぶ。
 あまりのことに呆然とする俺の手首を、先生の手が掴んだ。
「さ、授業前だけど、さっさと着替えちゃいましょう。佐々木さん、悪いけど山野君の荷物、持ってきてくれる?」
「はーい」
 莉子は嬉々として、俺のバッグやらスポーツバッグやらを担ぐと、そのまま教室を出て行った。先生は教室に向かって一言、
「それじゃあ、私が戻ってくるまで自習にします。それまでの間、テキストの英単語でも調べておいてね」
「はーい」
 同級生たちは、これまでの授業で一回も聞いたことがないような誠意にみちみちた返事をして、いそいそと自分の机に戻り、ノートを取り始める。っ、友達甲斐のない奴らだ。明らかに楽しんでやがる。あとで覚えてろよ。
 しかし、そうこうしているうちに先生も教室から出て行ってしまい、一人残された俺に対して、同級生たちの、「お前も早く行けよ」という空気がびしばし伝わってきた。
 仕方ない。俺はしばらく迷ったが、やむなく教室を出る。廊下の向こうに二人の姿が見えたので、慌てて追った。

  *

 二人がまず向かった先は、職員室だった。もうあと少しで授業が始まる時間なので、大半の先生は出払っている。残っているのは授業のない、割と暇な先生方ばかりだ。
「失礼しまーす……」
 先生の後に続き、俺と莉子は声をかけてから入ってゆく。先生が自分のデスクまで来ると、隣に座っていた国語教師(30代前半、童顔の女性教師)が、俺たちを連れてきた英語の先生に話しかける。
「あ、酒匂さん。ちょっと?」
「はい、なんでしょう?」
「えーと、聞きにくいんだけど、デスクの上にあるそれ、一体どうしたの? 今朝から気になって気になって……」
「ああ、これですか」
 酒匂先生はデスクの上にあるそれ……赤いランドセルを、軽くさすった。
「そう、そのランドセル。なんでそんなものがあるのかなって思って、ずーっと気になってたのよね。あなたまだ、結婚されてなかったはずだし」
「ええ。ですからこれは、こちらの山野君が使うものです」
 酒匂先生のとんでもない発言に、国語教師は目を丸くして、視線を俺に移した。俺は真っ赤になって手を振り、
「ち、違いますっ! 先生が勝手に……」
「隠さなくってもいいじゃない」莉子が口を挟んだ。「山野君が小学生の女の子になりたいって言ったから、酒匂先生が特別に用意してくれたんじゃないのよ」
「ああもう、佐々木さんは黙っててよ!」
 余計なフォローを入れる莉子を、俺は思わず怒鳴りつけた。しかし次の瞬間、
「うるさいぞ、山野! 職員室の中では静かにしろ!」
 向かいから、俺の声をはるかに上回る大音声で、生活指導担当の体育教師(外見年齢50半ばの男性教師、実年齢は30後半)が怒鳴った。険しい目で、俺を睨んでいる。
「誰のもんでも構わないし、お前にどんな趣味があろうと勝手だが、ここでは騒ぐな。いいからそれを持ってさっさと行け」
 明らかに、誤解されている。しかし体育教師は反論を許さない目つきで俺を睨んでいて、ここで言い合っても埒が明かないことは自明だった。だいたい体育教師という人種は、ガタイも態度もでかいから、学生としては大人しく従わざるを得ないところがある。俺は、黙って唇を噛んだ。
 その目の前に、赤いランドセルが差し出された。差し出しているのは、酒匂先生だった。
「はい、じゃあこれを背負って」
 思わず押しのけようとしたが、またしても騒ぎになるのはごめんだった。俺は大人しく肯いて、そのランドセルを背負う。ランドセルの中で何かが上下に揺れる感覚があり、中には教科書か何かが入っているようだった。
 酒匂先生は、さらにビニール製の透明なバッグと白い小さな布の袋を手に取り、俺にはピンクのギンガムチェックのショルダーバッグを持たせた。バッグの口からは紐が伸びていて、口をきゅっとすぼめるようになっている。体操袋か何かのようだ。
 うんざりしながらそれを肩にかけると、教室に置いてきたはずなのにいつのまに回収してきたものやら、莉子が俺の頭に黄色い安全帽をかぶせる。もう外すだけの気力もなく、俺はそのままの格好で、酒匂先生と莉子に促されるまま職員室をあとにした。

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