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十月兔

強制女装を中心とした小説・イラストのブログです。

2009-10

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『月夜哉』 第一章(5)


 (5)

「それじゃ、説明するわね。
 今いるここは、“Lunatic Night”という会員制のクラブの控え室よ。まぁ、お店自体は、ステージのあるバーみたいなものだと思えばいいわ。で、私がそこのホステスの一人、ジョウガ。漢字は……難しいから省くわね」
 ふたたびベッドにぐったりとなったぼくに、先ほど蛇男を案内してきた女性が戻ってきて、そう言った。当の蛇男は、向こうで冷笑を浮かべながらこちらを見ている。
 次々に、新しい単語が耳に入ってくる。“Lunatic Night”──狂気の夜。そして、ジョウガ。“Lunatic”の語源が月Lunaにあることを思い出していたためか、その響きからすぐに連想が働いた。ぼくは思わず、
「ジョウガって……中国民話の、女性? “嫦娥奔月”の?」
「あら、よく知っているわね。ええ。その嫦娥よ。で、そっちの男が我道。我が道って書くの。傍若無人な彼にはぴったりね。彼は店員じゃなくて、オーナーの個人的な知り合い。本業は洋画家よ」
 蛇男、もとい我道と呼ばれた男は、目を閉じて肩をすくめる。オーヴァ・アクションが妙に様になる男だ。
「で、あなたはこれからこの“Lunatic Night”の第8“スレイブ”、“葉月”よ。さっき、身をもって教え込まれたと思うけど」
「“スレイブ”……」
 奴隷Slave。そう言われると改めて、さっき貫かれた場所に烙印を押されたような気分だった。古代中国では、罪人などが奴隷におとされるとき黥(いれずみ)を入れられる。古代ローマでも、家産奴隷には所有者の名を烙印した。
 つまりぼくも、そうなったわけだ。僕は無表情にうなずいた。
「“スレイブ”ってのは、この店のステージで行われるSMショウでの“スレイブ”ね。私や他の“マスター”、あるいは店の客が“マスター”になって、あなたにSMプレイを行うことになるわ」
 どうやら、この店にはいろいろ仕組みがあるらしい。僕は適当に聞き流してうなずいた。聞いたところで、彼らのぼくに対する取扱いが変わるものとも思えない。
 嫦娥はぼくの内心など見透かしているように、薄く唇をつり上げた。
「その中であなたは“葉月”だから……まぁ、それなりにハード、といったところかしら? あ、ちなみに“葉月”みたいなコードネームごとに、プレイの内容は決まっているのよ。その中で“ハヅキ”は、男性“スレイブ”としては上から3番目、全体でも上から5番目にハードなプレイを要求されるわね」
「ちなみに、お前が通りで目撃したのが“ミナ”で、お前よりもハードさでは落ちる。そう聞けば、どのくらいのプレイになるか想像がつくだろう」
 これを聞いて、覚悟していたこととは言え鳥肌が立った。あの男性よりもっと酷い姿で、外に連れ回されるのだろうか。
「ちょっと、我道。“ハヅキ”が怯えてるじゃない。プレイ内容がハードと言っても、大丈夫よ。“ミナ”は露出プレイを中心とした“スレイブ”だから、あなたが外に連れ出されることはほとんどないわ」
「全くない、とは言えないが、少なくとも“ミナ”ほど頻繁ではないだろうな」
 ならば一体、何がハードなのか。
「そうだな。“ハヅキ”は男性からのレイプも前提になる。“ミナ”も一部受けているが、それほどじゃない。あと、“ミナ”は、裸に首輪ってのが制服だが、“ハヅキ”には別の制服が用意されている」
 つまり、裸に首輪以上に屈辱的な服装で働かなければならない上、男に犯されることもありうる、と言うことだ。目の前が真っ暗になる思いがした。
「その制服って?」
「……そうだな、すぐには調教にかかれないとしても、制服になれるための下準備はしておこうか。嫦娥」
「ええ。持ってきてあるわよ」
 そう言うと、嫦娥は部屋の隅に置いてあったバスケットを持ってきた。その中から、彼女が取り出したのは、

 あろうことか、一枚のネグリジェだったのである。

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