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十月兔

強制女装を中心とした小説・イラストのブログです。

2009-04

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体験入学 第三章(2)

 どうも。色々ご要望を頂いていますが、私生活や新作を書くのに忙しくて……そんなわけで、イラストは当面ありませんのでごめんなさい。
 お仕置き服に関してですが、長袖の丸襟ブラウスとピンクのジャンスカを一体化した上で、股ぐりのところをスナップボタンで留めるロンパースとしているものです。フリーサイズで、伸縮性のある素材で出来ています。具体的なイメージが欲しい方は、子供服メーカーでジャンスカやロンパースを検索して、妄想していただければと思います。

 最近、楽天のショップ「スイート*フェ」の家具やバッグが気になって仕方ありません。可愛いですよねぇ。こんなバッグを男性に持たせて幼稚園に通わせるとか……、実に楽しそうです。

 さてさて、馬鹿なことを言っていないで、開幕ですっ。

 * * *

 (2)

 そんなわけで、知香はいま、兄の部屋にいる。
 兄は現在リビングで、ぐったりとテレビを見ている。兄妹それぞれの部屋にはクーラーがついていないので、夏の暑い盛りには、クーラーのあるリビングにいることが多い。休日には両親が家を空けることが多く、鬱陶しい相手がいなくて過ごしやすいことや、子供部屋にテレビがないことも、大きな理由だったが。
 そしていったんリビングでとぐろを巻くと、滅多に自室には戻ってこない兄の習性を、知香はよく知っていた。たとえ急に戻ってきたとしても、「兄ぃがあたしから借りっぱなしのCDを返してもらいたかった」と言えばいい。
 部屋の中は、男子高校生としては綺麗な部屋だ。友達の兄の部屋をちょっと覗いたときに見た、あの乱雑なカオスに比べれば、はるかに整理されている。しかし女の子としては、ホコリや髪の毛が部屋の隅にたまっているのが気になった。
 無趣味を反映した、がらんとした空間。本棚には文学が数冊と、ライトノベルがそこそこ。そして、大量の漫画。机の上には学校で使うプリントと、教科書の山。しかしその教科書の堆積の中、隠すように挟み込まれたあるものに、知香の視点が釘付けになる。
 ――深山小学校の、パンフレット。
 それも、ふつうの外部向けの冊子ではない。小学校入学を控えた幼稚園児がいる父母向けに作られた、入学案内冊子だ。なぜこんなものが、兄の机の上にあるのか。知香は震える手でパンフレットを引っ張り出し、それをめくった。
 蒸し暑い部屋の中で、知香の額から汗が噴き上がる。
 パンフレットには、幼稚園児が色とりどりの制服を着て、小学校の授業を体験する写真が並ぶ。特に目立つのはクリーム色の、附属幼稚園の制服姿。深山小学校は実力主義を標榜しているため、附属幼稚園と言いながらも、完全なエレベーター式を採用していない。大部分がそのまま上がるのは確かだったが、成績や日ごろの行いいかんでは、小学校への入学が認められなくなる。そのため、附属の子であろうと、積極的に体験入学に参加して、小学校への入学を確実なものとしようとするのだ。
 めくっていたパンフレットの中から、一枚のメモ用紙が舞い落ちた。慌ててそれを拾う知香。そこには兄の、几帳面な文字が並んでいた。
「体験入学(六月最終日曜日)
 集合時間 八時(終了は一七時)
  集合場所 酒匂の家
  備考 念のため、学生証を持ってくること」
 知香の額から、ひとしずくの汗がメモに落ちた。
 彼女の頭には、ある想像が浮かんでいた。それはとても現実に起こりうるとは思えなかったけれど、状況はすべてその可能性を示している。
 パンフレットにメモを戻し、そのパンフレットも教科書の山の中に、元通りに挟んでおく。まだだ。このメモだけでは、証拠にならない。もっと何か――
 知香の目が、机の脇に置かれた大きな鞄に向いた。いつも使っている学生鞄や、体操服を入れている肩掛け袋とは明らかに違う、大きなボストンバッグ。内側からふくらみ、中に入っているのは、何かふっくらと柔らかいものと思われる。マットかタオルだろうか。いや。そのバッグのファスナーに手をかけて、知香は確信した。そして、ファスナーを大きく引き下ろした。
深山小学校附属幼稚園の制服!
 たったいまパンフレットで見たばかりの、上品で可愛らしいクリーム色の制服。しかしそのサイズは、幼稚園生が着るものではない。一六〇センチ少しの知香には着られないが、自分よりも背が低い兄にはぴったりだろう。それにほら、ボレロの内側には「Yuzuka Takeo」のネームが――。
 知香は声をたてずに笑った。どうやってかは知らないが、兄がこれを着て、深山小学校の体験入学に行ったことは間違いない。しかも「深山の子の方が英語ができる」のを認めたのは、体験入学で英語の授業に参加し、こっぴどく恥をかいたからに違いないのだ。
 さて、どうしてやろう。知香の脳裡に、ふと、四年前の記憶がよみがえる。可愛い服を着た知香を、似合わないと言って笑った兄の記憶。
 いまこそ、その恨みを晴らすときだ。可愛い服は、似合う人に着せてあげればいい。知香は附属幼稚園の制服を元通りにしまい、自室に戻って準備を始めた。

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