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十月兔

強制女装を中心とした小説・イラストのブログです。

2009-08

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乙女座の園 第7エリア(4)


 (4)

「って、え? なんでそれを……?」
 不意打ちで、良介は思わず聞き返した。そして答えてしまってから、もうこれがいまの問いに対する答えになってしまっていることに気付き──愕然とした。
 前回の電話では、彼は別の企画会社にいると嘘をついた。それが、あっさりと見破られてしまったのだから。
「やっぱり、そうなんだ」
 円香は気を悪くした風でもなく、にっと笑う。悪童のような表情だった。囁くような声で、
「そうじゃないかと思ったんだー。ほら、あたしが久しぶりに電話した日の少し前に、《乙女座の園》で鉢合わせたでしょ? あれ、絶対に良介だと思ったもの」
「う……」
 良介は言葉に詰まった。が、すぐに無駄な抵抗だと諦めた。円香に合わせ、周りからは聞こえないようにひそひそと、
「まぁね。あのときは正直焦ったし、ばれたら大変だから、知らん顔したんだ。でも、やっぱりばれてたか」
「うん。でも、似合ってたよ。すごく可愛かったし……それに、あのときの良介は活き活きしてた」
 円香は真剣な目で、そう言った。良介は思わず彼女をまじまじと見て、
「活き活き……してた? 俺が?」
「うーん、なんて言うか……やりがいに満ちてて、すごく楽しそうだった。可愛い服でお客さんをもてなして、お客さんを喜ばせることに一生懸命で、すごく輝いてた」
「そ、そう……? まぁ、確かに色々、やりがいは感じていたけど」
 良介はちょっと赤くなって、円香から目を逸らした。自分は、そんな風に見えていたのか。確かにウェイトレスをしているとき、ただ単に恥ずかしいばかりではなく、衣装や接客を喜ぶお客さんの顔にやりがいを見出していたことはあった。円香はそれを、一目で見破ったのだろうか。
「大学時代の良介ってさ、割と何事にも淡泊って言うか、あんまりやる気がないって言うか、そんな印象だったんだよね。でもあのお店で見た良介は、一生懸命で、他の人から見られることに喜びを感じているみたいで、すごく良かったよ」
「そ、そう? なんかちょっと照れるな」
「あははっ。でも真面目な話、良介って、女性の服を着ているときの方が魅力的だよ。似合ってるし、何より活き活きしている感じで」
「でもだからって、いつも女装していようとは思わないよ」
 良介は、曖昧に笑った。しかし円香は眉を寄せて、
「なんでよ、勿体ないなぁ」
「恥ずかしいからだよ。それ言ったら円香だって、スタイリッシュに決めれば一級の美人なのに、勿体ないことこの上ないぜ」
「ふぅん……良介も、そういう風に思うんだ」
 円香の顔が曇った。しかしすぐに眼を細めて笑い、
「ね。あたしがなんで大学時代、あんなにばっちりお化粧して、男性からもてはやされるようにしてたと思う?」

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