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十月兔

強制女装を中心とした小説・イラストのブログです。

2009-08

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乙女座の園 間章7

  間章7 ゴシックハウス《Phantasmagorie》

 授業開始2分まえ。教室内の生徒たちは、授業の準備をするものと、ぎりぎりまでおしゃべりに興じるものとに大別される。僕の隣の席でたむろって入る女子3人は後者、予習したノートを見直している僕は前者だ。
 女三人寄れば何とやらと言うけれど、隣で話す女子はずいぶんと大声でしゃべっていた。聞きたくもないのに、その内容が聞こえてくる。どうやら先週末、神奈川県内にオープンしたばかりのテーマパーク《乙女座の園》に行ってきたらしい。
 それを横で聞きながら、僕は内心冷や冷やしていた。実は昨日僕も《乙女座の園》に行っていたのだから。ばったり出くわさなかったのは、本当に幸運だった。
 僕には別に、女装趣味はない。ただ、一緒に行く予定だった友人に土壇場でキャンセルされ、1人で行くのを嫌がった姉が、僕に女装させて、強引に連れて行ったのである。もともと僕は、体つきが細くて髪も長い。女物のジーンズとシャツを着て、胸に詰め物をしたところ、怪しまれずにはいることが出来た。
 中に入ってからは、あくまで姉の付き添いのようなかたちで、あまり口をきかず、「寡黙な少女」を演じきった。姉はフォトスタジオに連れ込んで色々とドレスを着せたがっていたが、僕は黙りを決め込んで、結局怪しまれないよう、姉は僕に女装させることを諦めた。だから《乙女座の園》に入ったと行っても、それほど過激な女装はさせられずに済んだのだ。
 と、授業開始の本鈴が鳴り、おしゃべりしていた3人のうち、2人が席に戻ってゆく。僕は机の中に右手を入れ、筆箱を取り出そうとしたところで、中に1枚の紙が入っているのに気付いた。
 なんだろう。机の中からとりだしてみると、見覚えのない写真だった。
 それを見た瞬間、僕は真っ青になって、隣を振り向いた。
 隣の少女は、僕に視線を向けないまま、にやりと笑った。
 映っているのは、《乙女座の園》のカフェ《Sweet Spirits》店内。そして、そこで姉と一緒にケーキをつついている僕の姿。
 写真を裏返すと、そこには短くこうあった。

「放課後、女子テニス部の部室に来なさい」

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