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十月兔

強制女装を中心とした小説・イラストのブログです。

2009-08

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乙女座の園 第6エリア(3)

 (3)

「私は、それを壊したい。男性が女装することを恥ずかしいと思う、そんな社会の意識を。そしてその意識の根底にあるものを」
 晴香が何を言っているのか、良介は今ひとつ掴めない。晴香も、その「意識」や「根底にあるもの」が何なのか、詳しく説明する気はないようだ。そんなところも、彼女らしいといえば彼女らしい。彼女は基本的に、仮説に基づくことは口にしない主義だった。
 良介がぼんやりと考えている間にも、晴香の独白は続いていた。
「そのための手段として、まずは、女性が望むものを実現するようなテーマパークを作った。女性が本当に着たい服を着られるような社会にすることも、私の夢にとっては重要な一歩だったから」
 この言葉を聞いて、良介には思い当たることがあった。彼は思わず口を挟んだ。
「それって、もしかして」
「ええ、《乙女座の園》のことよ」
 晴香は首肯した。
「女性が望む、美しい夢に満ちた世界。《乙女座の園》のグッズショップで沢山の服を取り扱ったのも、《乙女座の園》を発信源にして、女性が可愛い服を着る風潮を作りたかったから。ロリィタ服が流行り、子供服のような可愛い服を着る女性が増えている今、勝算は低くないと思っていたわ」
 良介は晴香の慧眼に脱帽した。確かに、《乙女座の園》は開園直後の大混雑のあとも、堅調に客足を伸ばしている。グッズショップの売り上げも好調で、しかも原宿を中心に、普段着として着ている人さえ増えていた。とある女性ファッション誌で、《乙女座の園》で売られている衣装の着こなしスタイルが紹介されるほどだった。
「じゃあ、社長の夢に向けた第一段階は、割と上手くいってるんですね」
「まぁね。そしてこうすることで、人々のファッションに対する考え方を変えていければと思ったの」
「ファッションに対する、考え方……?」
「ええ。大人の女性だから大人向けの服しか着ない。男性だから、女性向けの服は着ない。そういう考え方。……その逆は、あるわよね。最近の子供は大人っぽい、洒落た服を着る子も多いし、女性でも男性の服を着る人がいるのは……さっきも言ったと思うけど、もう日常的な風景にになりつつある」
「…………」
「《乙女座の園》のプロジェクトでは、大人の女性が子供っぽい服を着るように仕向けるかたちで、取り組むことが出来た。なんとか上手い具合に『ファッションの一部』にまで持っていくことが出来たわ」
 晴香はここで、良介の方を振り向いた。口元には、楽しげな笑みが浮かんでいた。
「この次に私が取り組むのは、当然、男性が女性の服を着ることに対する抵抗感を無くすためのプロジェクト。それも、学園祭や忘年会のジョークではなく、本当に、男性がスカートをはいていても誰も何とも思わないような、そんな社会を目指す取り組みよ。そのために何をするのかは、まだ考えている最中だけど……いずれ、やってみせるわ。この社会を変えていくために、ね」

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