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十月兔

強制女装を中心とした小説・イラストのブログです。

2010-05

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『女児転生』 第二章(1)

 いよいよGWの更新最終日。中途半端なところで終わりますが、これから毎週末一回ずつくらい更新しようと思っています。

 それでは、本日分をどうぞ。

  * * *


  第二章 小学生(1)


 俺が暮らしているのは、市内でも外れのほうにある分乗住宅地の一角だった。どこもかしこも同じような家が建ち並び、同じような家族が暮らしている。
 こういった新興住宅地の常で、隣人同士の仲はあまり良くない。程々に向上心のある中産階級で、内心で嫉妬と対抗心を燃やしているのを、この街に来て以来ずっと、俺は感じ取っていた。
 普段であれば、そんな街の空気にうんざりしているといいたいところだったけれど、今日ばかりはありがたかった。
 ここに来る前に暮らしていた下町では、暇なおばさん連中の井戸端会議が常にどこかで開かれていて、もしもそんなところに俺が通りかかろうものなら、たちまち近所中の物笑いになるに決まっている。
 しかしこの住宅地では、そうした光景はほとんど見られない。なので、昼日中のこの時間、住宅街にはほとんど誰もいなかった。
 体操着とブルマー、そして上履きというスタイルで、俺は自分の家を、なるべく最短距離で歩いていった。人通りの多いあたりはなるべく通らないようにする。さいわい誰ともすれ違っていないが、もしかしたら、窓から俺の姿を見つけるような人もいるかも知れない。全身が緊張に震えたが、ここでためらっていても事態が好転しないことは、明白だった。
 大丈夫、大丈夫。たとえ俺の姿が遠くから見られていたとしても、まさか俺──男子高校生の山野武志だとは、思うはずがない。せいぜい、近所の子供かな、今どきブルマーだなんて珍しいな、どこの子だろうな、ちょっと背が高く見えたけどいくつくらいの子なんだろうな、そう思う程度だ。そうだ、そうに決まってる。男子高校生がブルマーで街中を歩き回っているなんて、ふつうに考えれば絶対にありえないんだからな。
 それでも心臓は、まるで爆弾が埋めこまれているかのようにばくばくと鳴り、必死に呼吸を落ち着けながら、俺は家路を急いだ。
 そして遂に、待ちに待った自宅が見えてきたのだが──
「忘れてた……」
 迂闊だった。うちはこの辺りの住宅地では珍しく、夫婦共働き。父親は夜遅く、母親でさえ夕方にならないと帰ってこない。普段であれば鍵を持たされているし、だいたい俺が帰る頃には、母さんは帰ってきている。だから深く気にしなかったのだが、この時間、家には誰もいないのだ。
 やっとたどり着いた我が家。しかし、中に入ることは出来ない。畜生、どうすれば……
 俺は玄関脇から、ぐるりと家の窓を確認することにした。あまり期待はしていなかったが、やはり用心深い母親のこと、窓の鍵が開いているはずがない。もしかしたら、二階のベランダに俺の洗濯物が干してあるのではないかとも期待したが、それさえも見あたらなかった。
 どうしよう──
 縁側に腰掛けて、俺はしばし黙考した。いくら人目が少ないとはいえ、自分の家でこんな格好をしていれば、俺だとばれる可能性もある。塀があるので道路から見えることはないにしても、二階の窓からはばっちり見えてしまうだろう。
 しかし、ここを出ていったとしてもけっきょく人目につくことに変わりはないし、夕方になって戻ってくれば、近所の子供や買い物帰りの主婦に見られる危険性が高まる。
 だとすれば、ここにいるしかないのか──
 仕方ない、なるべくほかの家に見えない位置で、母親の帰りを待つか。それしかない、と心に思い定め、俺は縁側のなるべく蔭になる位置に──

「お兄ちゃん、なにしてるの?」
 

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