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十月兔

強制女装を中心とした小説・イラストのブログです。

2009-07

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乙女座の園 第5エリア(4)

 ダイガ様、コメントいただきありがとうございます。強制女装って、素晴らしいですよね。同好の方とお話しできる機会はなかなかありませんので(笑)、これからもぜひお立ち寄り下さい。

 さて、またしても少し間が開いてしまいましたが、本日も開幕。

 * * *

 (4)

「子供の頃、僕は女の子とお人形遊びをしたり、絵を描いたりしているような、ごく大人しい子でした。男の子の中にも時々いる、女の子と遊ぶのが好きな子供だったんです」
 留美はソルティ・ドッグを傾け、静かに話し始めた。確か彼女は未成年ではなかったか。ちらりとそんなことを思ったが、無粋なことは言わず、良介は黙って彼女の話に耳を傾ける。
「そのころ、何となく思ったのを覚えています。なんで男の子はズボンしか穿けないのだろう。なんで女の子は、ズボンとスカート両方穿けるのだろうって。子供心に羨ましくって、それを口にしたら、ある女の子がスカートを貸してくれたんですよ。穿いてみて、でも周りからは変な男の子、オカマ、なんて言われて、泣きながら脱いだのを覚えています」
「…………」
「今から思えば、昔から兆候はあったんですね。でも、周囲からの冷たい目、軽蔑、そうしたものを感じ取って、『スカートを男が穿くのはいけないことだ』というのが刷り込まれてしまったのでしょう。それ以来僕は普通に、ズボンを穿いて同年代の男子と一緒に駆け回る、ごくありふれた子供に変わってしまいました。それは、本当はスカートを穿きたいけど仕方なく、と言うのではありません。自分自身がもつ、男の子はこうあるべきというイメージに縛られて、それ以外見えなくなっていただけです」
「…………」
「そうして、『男』を演じる僕は、とても安定していました。スカートを穿いたときのように周囲と軋轢が生まれることもない。スカートを穿いた記憶は、僕の中ではもはや忌まわしいものとして定着してしまったので、あのときに感じた純粋な疑問……『どうして男の子はスカートを穿いてはいけないのか』という疑問を感じることもなくなった。欺瞞と演技の中に僕の『本質』は埋もれ、その中での安定が保たれたのです」
 良介は静かに水割りを干し、おかわりを注文する。留美のグラスにはまだ、半分ほど残っていた。
「そのままなら、僕は他の大半の男性と同じように、女装もせず、もちろん性転換して女になろうとも思わず、ごくごく平凡な男性としての生活を送ったでしょうね。高校生まではそうやって、男性として生活していましたし、彼女と普通にセックスもしましたし、ね。性自認……って言いましたっけ、自分の意識としての性別は、間違いなく男性だったんですから。
 ですが……」
 留美はグラスをあおり、残り半分を一気に喉の奥に流し込んだ。良介はその様子に、
「大丈夫かい? 話したくないなら、無理に言わなくても……」
「いえ、大丈夫です。さすがに素面だと、話しにくいだけなので……お酒にはそこそこ、強いですしね」
 笑って言うと、留美は追加を注文し、ふたたび訥々と語り始めた。
「そうしてごくごく普通の少年として高校を卒業した僕は、家庭の事情で大学に行かず、就職することになりました。就職先は、この『B&B』です。思えば採用の際の面接で、初めて顔を合わせたときから、黒谷社長は僕に眼をつけていたのでしょう。テーマパークに興味があって就職を希望した僕は、あっさりと採用されました。
 そして僕は……黒谷社長の手によって、もう一度、『女性』の入口へと連れて行かれたんです」

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