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十月兔

強制女装を中心とした小説・イラストのブログです。

2009-07

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乙女座の園 第4エリア(4)


 (4)

「最近の女性服が、妙に子供っぽいと思ったことはねぇか?」
 フラッシュを焚きながら、宣伝部長は軽い口調で尋ねた。
「パフスリーブ、丸襟、フリル、レース、タータンチェック、ジャンパースカート、フリルたっぷりのミニスカート。あたしが若い頃にゃ、いわゆるアイドル系の女の子しか着なかったような服を着て、街中を歩いてる女の子が多くなってる。だいぶん、そう言った服を大人の女性が着ることに、抵抗がなくなってきてるんだ」
「ええ……」
「一部の見方には――これは男の意見で多いんだが――今の女性は大人になりたがらない、いつまでも子供のままでいたがる、ピーターパン・シンドロームの一類型だ、なんていうやつもいる。でもあたしは……あ、ほっぺたに手を当てて。そう、そんな感じだ。……でもあたしは、女性が自分の着たいものを着るようになった、いい傾向だって思うね。服装なんて、あんまり見苦しくさえなけりゃあ、どんなものを着ていたって構わないはずだ。しかも今の子は化粧品の発達や、美容に関する研究が進んだおかげで、結構いつまでも綺麗な子が多い。それこそ子供服を着ていたって似合うような女の子はいくらでもいるしな」
「…………」
「そういう子達が可愛い服を着たいから着て、誰にも迷惑かけちゃいねぇってのに、それをとらまえてピーターパン・シンドロームの、幼児退行のと言い立てるのは、野暮天の極みってぇもんじゃねぇか。なぁ、りさちゃん」
 彼女が言うあいだにも、良介は部長に言われるがままにポーズを取り、いかにもぶりっこな表情と仕草で撮影される。もしかしたら部長も、《乙女座の園》で使われているような服を着たかったのかも知れない。良介はひそかにそう思った。
「なぁ、りさちゃん。あんたはどう思う? やっぱり、いい年した大人が子供服を着てたら変だとか、思うかい。怒らねぇから、正直なところを言ってみな」
「え、ぼ、僕ですか? 僕は……」
 良介はどもった。この部長を相手では、迎合するような嘘をついたとしてもすぐにばれてしまうだろう。彼は慎重に、思うところをしょうじきに述べた。
「僕としては……ある程度見苦しくなければ、街中を歩いていても構わないと思いますし、似合っていればなおさら、問題はないと思いますよ。ただ、こういう子供服を着ることは、まだまだ一般的になっているとは思えません。ですから、着たい服を着るのであれば、周囲から多少なりとも奇異の目で見られるのは覚悟する必要があると思います」
 良介の答えに、部長は首を振った。
「社会的に一般化しているかなんて、どうでもいいんだ。肝腎なのは、りさちゃんがどう思うかだ。大人の女性が子供服を着ていて、そこそこ似合ってる。そいつをおかしいと思ったり、馬鹿にしたりするかね?」
「それは……しませんよ。特に、似合っていれば」
「なら」
 部長はここで、良介に向かい、嬉しそうに笑いかけた。
「なら、りさちゃんのことにしたって同じだよ。男だって同じだ。好きなものを着て、それが見苦しくさえないんなら、他人の眼を気にする必要はねぇ。大丈夫、りさちゃんはちゃんと似合ってる。あたしが保証してやるから、まわりがどう思うかなんて、気にすることはねぇよ」

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