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十月兔

強制女装を中心とした小説・イラストのブログです。

2009-11

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『女児転生』 第一章(8)


 (8)

「く、ちくしょおっ!」
 俺は乱暴に、バッグとランドセルを放り出し、ふたたび奥の準備室へと逃げ込んだ。後ろから追ってきた二人を睨み付けて、叫ぶ。
「もう、いい加減にしてくれよ! 気は済んだだろ!? 俺にこんな服を着せて、何が楽しいんだよっ!」
「なによ。女の子になりたいって言ったのは、山野君じゃない」
 オモチャを取り上げられた顔で、莉子が言った。自分がむりやり着せた癖に、どこまでも他人に責任を押しつけようとする態度が、気に入らなかった。俺は獰猛に言い返す。
「そうかい。俺の願いを叶えてあげるって言うんなら、さっさとこれを脱がせて、俺の制服を出してくれよ」
 莉子は言葉に詰まった。が、隣にいる先生は口元の左側だけで笑い、
「だめよ。せっかくその服を着たんだから、子供らしく授業を受けなさい」
「ふざけるな! こんな格好で授業に出ろって言うのか!?」
「ええ」
 先生は、平然と言った。そして、奇妙に優しく丁寧な、しかし怒りを押し潜めたような声で、言葉を紡ぐ。
「その服を着ている以上、山野君はもう小学生の女の子なの。あなたがどんなに言いはろうとも、その服を着ていると言うだけで、あなたは小学生の女の子として振る舞わなければならない。今のあなたの姿を見て、一体どれだけの人が、あなたをごく普通の男子高校生だと思うかしら? 男子高校生として扱うかしら?」
「そんな……! だいたい、着せたのはそっちじゃないか! 俺は別に、自分が着たくて着たわけじゃないんだ!」
「判っていないわね。あなたが自分で着たかどうかなんて、もう関係ないのよ」
 先生はくつくつと笑っていた。
「いい? あなたはクラスメートの前で『小学生の女の子になる』ことを宣言されてしまった。そして今こうして、本当に小学生の女の子のような服を着ている。ここまできた以上、もうその格好でクラスメートの前に出るしか、道は残されていないのよ?」
「だ、だけど……!」
 あまりの無茶苦茶な理屈に、俺は言葉を失った。
 さっき、これは冗談でする女装で、誰も本気にしない、とか何とか言ってたじゃないか。それが服を着たとたん、その舌の根も乾かぬうちに、小学生の女子制服を着た以上、女子小学生として振る舞わなければいけないなどと命令する。無茶苦茶だ。
「だけどそんな、さっきは冗談だと言いくるめておいて、今さらそんなことを言うなんて、──」
 俺は気力を振り絞って、反論しようとした。
 しかし、その時。

「いい加減にしなさいっ!」

 先生の大声が、狭い室内に響いた。俺はびっくりして、思わず肩をすくませる。
 先ほどまでの物わかりのよさげな態度は、一変していた。先生は苛立ちを隠そうともしない、まるで聞き分けのない子供をしかりつけるような声で、つけつけと言った。
「あのね、山野君。もとはといえばあなたが、生まれ変わるなら小学生がいい、男でも女でもいいけど、出来れば女に生まれ変わりたいって言ったから、先生はこうして、わざわざ子供服を買ってきてあげたのよ? それを、ちょっと恥ずかしいからって着るのを嫌がったり、着たあともみんなに見られるのは嫌だって言ってぐずるなんて、本当にわがままね。言いたくはないけれど、先生だって山野君の話を聞いて、ああ、山野君ってそんなことを考えていたんだ、ちょっと恥ずかしいと思うかも知れないけど、女の子の体験をさせてあげたいって、わざわざお洋服からランドセルまで揃えたのよ。それを、別に誰に観られたって、ちょっといつもと違う格好で珍しがられるだけで、別にみっともない格好をしているわけじゃあるまいし、そんなに恥ずかしがる理由もないでしょ?」
「うっ、……くっ……」
 高圧的な声。今まで大人の態度で我慢してきたけれどとうとう堪忍袋の緒が切れたと言わんばかりの口調に、俺は反論できなかった。理屈ではない。その口調をきいているだけで、まるで自分が子供っぽいわがままを言って相手を困らせているだだっ子であるかのような錯覚がしてくる。

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