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『女児転生』 第二章(9)
(9)
お出かけだからと、俺は新しく別の服に着替えさせられた。女の子のお出かけ着、といった感じの衿付きサマードレス。オレンジ色のチェック模様が、いやに可愛らしい。頭には、リボンのついた麦わら帽子。足元は編み上げサンダルで、自分で言うのもなんだが避暑地のお嬢さんのような服だ。
一方で同行するリアル小学生三人は、それぞれラフなスタイルだ。秋穂ちゃんは水色のキャミワンピだし、冬花ちゃんはシャツワンピにスパッツ、有里奈ちゃんは黒いノースリーブタートルネックに、七分丈のパンツ。この三人の中で俺ひとり、気合いの入った可愛らしいお嬢様スタイルなのだから──
「なーんかみんな、お兄ちゃんに注目してるよね」
「ふ、冬花ちゃん、余り大きな声で……」
俺は思わず言った。冬花ちゃんの言うとおりさっきから、俺は道行く人に、注目され続けているのだ。しかし、
「なによ、お兄ちゃんはお兄ちゃんでしょ。あたしたちより年上の、お兄ちゃんじゃない。確かにぱっと見じゃ判らないほど女の子っぽいし、本当に小学生の女の子なあたしたちとならんでも判らないくらいだけど、でも18歳の男の子ならそれらしく、自分が本当は高校生の男の子だって認めなさいよ」
大声で反論されて、さらに人目が集まる。これでは言えば言うほど、恥の上塗りだ。大通りを歩く通行人が、ひそひそと話しながら俺を見ているのが判る。これ以上何か言われないように、俺はじっと、口をつぐむ。
「それに、私たちみたいな小学生に一緒にいると、本当に小学生なんだって思われて恥ずかしいのよね だから、周りにちゃんとお兄ちゃんなんだって判ってもらったほうがいいんじゃないかしら。どっちみち恥ずかしいことではあるけど」
追い打ちをかけるように、有里奈ちゃん。俺は真っ赤になったが、しかし逃げるわけにも行かず、ただ女の子たちにからかわれるままになっているしかない。一体、いつまで歩けばいいんだろう。どれだけ辱められれば、彼女たちは気が済むのだろう。
そう思っていたときだった。秋穂ちゃんが、
「あ、このお店よ」
「文月制服店」の看板が掛かる店の前で立ち止まり、ぼくらは店内に入っていった。
「すいませーん」
「はい、いらっしゃいませ。あらあら、秋穂ちゃん。お友だちいっぱいつれて、どうしたの?」
迎えたのは、俺の目から見た「お姉さん」だった。すっきりしたシャツとパンツを身につけた、大学生くらいの女性。
「ネネおねーちゃん、こんにちは! きょうはね、えっとね、試着させてもらいに来たの!」
「あらあら」ネネ、と呼ばれた女性はくすんと笑って、「だめよー、可愛い制服を着たいのは判るけど、本当ならお客さんだけなんだからね」
「う……だめ?」
「うーん。でも、久しぶりに秋穂ちゃんの可愛い顔を見られたことだし、特別にサービスしてあげる。どれを着たいの? ちょっとお姉ちゃんぶって、中学生の制服?」
「えーとね、幼稚園の制服! 秋穂がむかし着てたの!」
「あらあら。構わないけど、どうしたの? 急に昔の制服を着たがるなんて」
「あ、試着するのは秋穂じゃないよ! あっちのお兄ちゃん!」
秋穂ちゃんはそう言って、こっちを見た。
げっ。俺がビビっていると、ネネさんは迷うことなくまっすぐに俺を見た。両側には同じくらいの背丈──というか有里奈ちゃんに至っては、俺より少し背が高い──の少女が二人いるのに、何で判ったんだろう?
「それだけ引きつった顔をしてれば、ふつう判るわ」有里奈ちゃんが、見透かしたように言う。「初めまして、制服店のお姉さん。私と向こう側の子は、秋穂ちゃんの友達です。で、この真ん中の人が、秋穂ちゃんのお隣に住む高校生の男の子です。試着したいのは、このお兄ちゃんなんです」
「へぇ」
その瞬間、俺を見つめるネネさんの目の色が変わった。優しい親切な店員さんの表情から、サディスティックな蛇の目に。それを見ただけで、俺は判った。この人は、酒匂先生や佐々木莉子と同じ人種だと。
「ふふっ、高校生の男の子、ねぇ。とてもそうは見えないけど……ふふっ、そう。なら、いいわ。ここには、そのくらいのサイズの制服も用意してあるもの。好きなだけ、試着させてあげる」
ネネさんは笑った。まるで女郎蜘蛛が、巣にかかった獲物を見るような目だった。
* * *
SMカップルの逆転というシチュエーションも、いいですよね。肉体転換ものと絡めてみるのも、面白そうです。
僕はメス豚? ファンタジーものが好きな方向きですね。
『女児転生』第二章 (8)
(8)
──数分後。
俺は三人の女の子に囲まれて、秋穂ちゃんの部屋にいた。女の子たちがそれぞれ寛いだ格好でいる中で、俺だけが正座させられている。野崎冬花というこの少女が、提案したことだった。「秋穂をいじめた罰」というのがその理由だったが、確かに効果抜群だ。脚の痛みが、この上なく屈辱感を増大する。
しかもその格好で、俺は今日ここに至るまでの経緯を、彼らに説明させられた。小学生のような女子制服を着せられたこと、女児下着姿をクラスメイトたちの前に晒したこと、ブルマーで授業を受けさせられたこと、うんぬん。
「──多少は同情するけど、でも半ば以上あなたのせいね。しかもその苛々を秋奈にぶつけたのだから、弁護の余地はないわ」
話を聞き終わって最初に口を開いたのは、眼鏡少女のアリナ──海潮有里奈(うしおありな)だった。まったくの正論で、俺は別種の羞恥に赤くなる。
「くくっ、それにしても、高校生が女の子の制服を着るなんてねぇ。うちの学校の制服も、似合いそうじゃない」
冬花ちゃんは意地悪く笑いながら、とんでもないことを言い出した。
俺は口ごもった。とっさにまた、致命的なことをいってしまいはしないかと懸念したのだ。しかしその隙に、
「あ、うん、そだねー。お兄ちゃん、あたしの制服着てみる? 可愛いわよ、ほら」
いやなパターンだ。泣く子と地頭には勝てぬ、というフレーズが、唐突に頭に思い浮かんだ。学校で女装させられたときとは違う意味で、逃げ道がない。ましてや秋穂ちゃんには、冬花ちゃんという参謀がついていて、あの屈辱的な映像を握っているのだ。彼女たちの意を迎えるようなことを、俺じしんが自発的にしたと思われる形でしなければならないのだ。下手をすればそれを録音されて、さらなる悪夢が待っているかも知れない。しかし──
「知ってる、お隣のお兄ちゃん? 動画のアップロードって、思ったよりも簡単にできるのよ?」
退路を封じるように、冬花ちゃんが釘を刺す。この少女ならば、そのくらいのことはやりかねない。
俺が黙り込んでいるあいだに秋穂ちゃんは立ち上がり、壁に掛かっている自分の制服を持ってきた。襟と袖口に紺のラインを用いた、セーラーワンピース。デザインには幼さが残っているものの、配色自体は清楚なものだった。
「ね、お兄ちゃん、秋穂の制服、着てみたい?」
「あ…………」
これを着せられる──と考えただけで、ペニスの根本がきゅっとしまるような感覚がある。穿くまでもなく、袖口のすぼまりからスカートのひらひらまで想像できてしまう。高校生でありながら、本物の小学生の目の前で制服を着せられる──そのことに、俺はぞっとした。
しかし、断ることは出来ない。いや、それどころか、
「あ、ああ。秋穂ちゃんの制服、着て、みたい、な……」
自分から女装をおねだりしなければならないことに──
「だめよ」
とつぜん、冬花ちゃんが俺の声を遮った。見ると、彼女は腕組みしながら冷笑を浮かべて、
「ね、秋穂。このお兄ちゃんだったら、秋穂ちゃんのいまの制服じゃなくて、4年前まで着ていた制服のほうが、似合うと思わない?」
「あ、うん! そうだね!」
秋穂ちゃんは嬉しそうに叫び──ちょっと待て。いま、なんて言った?
「えーとね、秋穂が一昨年まで着てた、幼稚園の制服! 確かまだ、どこかにしまっておいたはずなんだけど……」
幼稚園。小学生の制服だってありえないほどに恥ずかしい思いをしたのに、まして幼稚園の制服なんて──
「二人とも、忘れてるみたいだけど」
するとこれまで、無関心そうに話を聞くだけだった有里奈ちゃんが、口を挟んだ。
「秋穂って、この二、三年でずいぶん背が伸びたんでしょ? だとしたら、幼稚園だったころの制服が残っていたとしても、そこの高校生のお兄ちゃんに、着られるわけないと思うな」
「それも、そうね」
冬花は残念そうに言う。ほっ。サイズが合わなければ、着せるわけにはいかないだろう。助かった、と安堵の息をついたとき、
「そうね。それなら、新しく作ってもらいましょ」
冬花ちゃん、いったい何を──!?
「駅前の制服専門店で、つくってもらえたはずだもの。それにたしか、サンプルの無料貸し出しもやっていたはずだし──うん、決めた! これからそのお店に行って、このお兄ちゃんにぴったりの制服を貸し出してもらいましょ!」
『女児転生』 第二章(7)
この「十月兔」でも、」男性がオムツをあてられた上で女の子用のベビー服を着せられるというシチュエーションを多く書いていますが、海外においてもこうした性嗜好はなかなか発展しているようです。たとえば「sissy baby」などのキーワードをもとに「youtube」を検索すると、男性がピンクのフリフリベビードレスを着ている姿が出てきたりします。
これらの動画、衣装は非常に可愛いのですが、いかんせん羞じらいがないのが難点。ピンクのフリフリを着せられたごつい男が、楽しげにひょこひょことお尻を揺らしているのでは、今ひとつ萌えません。
また、男の子が可愛い女児用のベビードレスを着せられるというシチュエーションの絵もあり、一時期はとあるブログで和訳紹介されたりもしていたのですが、最近は撤去されたようです。残念。
さて、前置きが長くなりましたが、『女児転生』をどうぞ。
* * *
(7)
玄関のドアが開き、二人の少女と向かい合う。二人とも秋穂ちゃんと同じくらいの背丈で、アリナと呼ばれた眼鏡少女の方が、やや背が高い。二人は入ってすぐに俺を見たが、その目がみるみるうちに丸くなり、
「あははははっ、誰よこの子!」
ご近所中に響き渡るんじゃないかと思ってしまうほどの馬鹿笑いが、爆発した。笑ったのは、フユカと呼ばれた少女の方だった。彼女は片方の手で腹を押さえ、もう片方の手で俺を指さして、
「あはっ、あははははっ、なによ秋穂ったら、近所のお兄ちゃんと一緒にいるって、くくっ、近くのお誕生日会から女の子を引っ張ってきた、の間違いじゃない?」
「ちょっと失礼よ、フユカ」アリナは眉をひそめて俺を見つめ、「ごめんなさい、この子がへんなことを言って。アリナが言いたくなるのも無理はないけど、でも、初対面の人にいう言葉じゃないものね」
「い、いや、その…………」
俺は口ごもった。ひどい言われようだったが、そう言われても、仕方がない状況だった。何せいまの俺の格好と来たら──
ピンクのワンピース。長袖は先に行くに従って扇状に広がり、袖口にはリボンがついている。肩のあたりはふくらんで、ひだ(秋穂ちゃんは「シャーリング」と言っていたが)がたっぷりと寄せられ、首元には白い丸襟。背中にはおおきなリボンがついていて、裾に白いフリルがついたスカートの丈は、極限まで短くされている。ほとんど、丈の長いシャツ一枚でいるような気分だった。
ワンピースの下から伸びる脚には、リボン通しが施された白いニーソックスを穿き、さらに室内だというのに赤いエナメルの室内履きを穿いている。一方で髪の毛には、ハート型のアクセサリーが二つついていて、それぞれ頭のてっぺんで髪を一房留めていた。
さらにワンピースの上には、ふりふりのついた真っ白いエプロン。胸のあたりはハートが二つ並ぶようなデザインになっていて、いかにも実用向きではない。
いまの俺は、およそ男子高校生には見えない──それこそもってフユカの言ったように、お誕生日会を抜け出してきた女の子のような服装だったのだ。
小学生の少女二人の前で、こんな格好をしなければならないなんて。屈辱に全身が震えたが、
「ちょっと、お隣のお兄ちゃん? いつまでそこに立ってるつもり? 早く、秋穂ちゃんの部屋に案内しなさいよ」
「あ、は、はいっ!」
フユカの鋭い指摘に、俺は思わず敬語を使ってしまう。言ってしまったあとで気付いたが、もう遅い。二人の少女の顔に、さらに辛辣な軽侮の色が浮かぶのを、俺ははっきりと見て取った。
「ふぅーん……あははっ、楽しいわねぇ。お兄ちゃん、小学生よりも気が回らないなんて、ホントにだめね。これじゃお兄ちゃんじゃなくて、ちっちゃい女の子ね」
「そうね。でもフユカ、あんまりいじめちゃだめよ。ちっちゃい女の子には、優しくしてあげなさいね。たとえ中身が、高校生の男だって判ってても」
言いたい放題だ。自分の立場がどんどん落ちていくのを感じながら、
「こ、こちらにどうぞ……」
俺は取り繕うように言って、二階にある秋穂ちゃんの部屋に、二人を案内する。
とうぜん俺が先に階段を上り、二人が後に続く形になる。すると俺の後ろから、フユカがまたもげらげらと笑い出すのが聞こえた。
「あはっ、なにっ、下着まで可愛い女の子ってわけ!?」
「え……あ、やぁっ!」
──忘れてた。このワンピースは裾が極端に短くて、階段の下からのぞいたらたちまち中の下着が見えてしまうことに。
「やだもー、クマさんパンツなんて、今どき小学生だってはかないわよ? くくっ、確かに秋穂は持ってるかも知れないけど、あの秋穂だって、子供っぽすぎていやだって言ってるくらいなんだもの。それを──高校生にもなった男が穿いてるなんて、あははっ、どう見ても変態じゃない!」
「あ……ああっ、やだっ、見ないでよっ!」
慌ててスカートのお尻を隠すが、もう遅い。いや、むしろそんな仕草さえ、
「あらあら、そんなお子様ぱんつなんて、見えたって誰も喜ばないわよ。そんなぱんつ穿いてるようなお子ちゃまは、気にしたらおかしいわねー」
「仕方ないじゃない。むしろ、お子様ぱんつをスカートの下から見せびらかすほうが、よっぽど変態よ。高校生の男の子がそんなものを着ていること自体が変態的なのは、さておくとしても」
俺はスカートを押さえたまま、階段にしゃがみ込んだ。なんでこんな目に遭わなければいけないんだ。視界がじんわりとにじむなか、俺はしばらく、その場を立ち上がることが出来なかった。
追記:カテゴリを整理しました。
これらの動画、衣装は非常に可愛いのですが、いかんせん羞じらいがないのが難点。ピンクのフリフリを着せられたごつい男が、楽しげにひょこひょことお尻を揺らしているのでは、今ひとつ萌えません。
また、男の子が可愛い女児用のベビードレスを着せられるというシチュエーションの絵もあり、一時期はとあるブログで和訳紹介されたりもしていたのですが、最近は撤去されたようです。残念。
さて、前置きが長くなりましたが、『女児転生』をどうぞ。
* * *
(7)
玄関のドアが開き、二人の少女と向かい合う。二人とも秋穂ちゃんと同じくらいの背丈で、アリナと呼ばれた眼鏡少女の方が、やや背が高い。二人は入ってすぐに俺を見たが、その目がみるみるうちに丸くなり、
「あははははっ、誰よこの子!」
ご近所中に響き渡るんじゃないかと思ってしまうほどの馬鹿笑いが、爆発した。笑ったのは、フユカと呼ばれた少女の方だった。彼女は片方の手で腹を押さえ、もう片方の手で俺を指さして、
「あはっ、あははははっ、なによ秋穂ったら、近所のお兄ちゃんと一緒にいるって、くくっ、近くのお誕生日会から女の子を引っ張ってきた、の間違いじゃない?」
「ちょっと失礼よ、フユカ」アリナは眉をひそめて俺を見つめ、「ごめんなさい、この子がへんなことを言って。アリナが言いたくなるのも無理はないけど、でも、初対面の人にいう言葉じゃないものね」
「い、いや、その…………」
俺は口ごもった。ひどい言われようだったが、そう言われても、仕方がない状況だった。何せいまの俺の格好と来たら──
ピンクのワンピース。長袖は先に行くに従って扇状に広がり、袖口にはリボンがついている。肩のあたりはふくらんで、ひだ(秋穂ちゃんは「シャーリング」と言っていたが)がたっぷりと寄せられ、首元には白い丸襟。背中にはおおきなリボンがついていて、裾に白いフリルがついたスカートの丈は、極限まで短くされている。ほとんど、丈の長いシャツ一枚でいるような気分だった。
ワンピースの下から伸びる脚には、リボン通しが施された白いニーソックスを穿き、さらに室内だというのに赤いエナメルの室内履きを穿いている。一方で髪の毛には、ハート型のアクセサリーが二つついていて、それぞれ頭のてっぺんで髪を一房留めていた。
さらにワンピースの上には、ふりふりのついた真っ白いエプロン。胸のあたりはハートが二つ並ぶようなデザインになっていて、いかにも実用向きではない。
いまの俺は、およそ男子高校生には見えない──それこそもってフユカの言ったように、お誕生日会を抜け出してきた女の子のような服装だったのだ。
小学生の少女二人の前で、こんな格好をしなければならないなんて。屈辱に全身が震えたが、
「ちょっと、お隣のお兄ちゃん? いつまでそこに立ってるつもり? 早く、秋穂ちゃんの部屋に案内しなさいよ」
「あ、は、はいっ!」
フユカの鋭い指摘に、俺は思わず敬語を使ってしまう。言ってしまったあとで気付いたが、もう遅い。二人の少女の顔に、さらに辛辣な軽侮の色が浮かぶのを、俺ははっきりと見て取った。
「ふぅーん……あははっ、楽しいわねぇ。お兄ちゃん、小学生よりも気が回らないなんて、ホントにだめね。これじゃお兄ちゃんじゃなくて、ちっちゃい女の子ね」
「そうね。でもフユカ、あんまりいじめちゃだめよ。ちっちゃい女の子には、優しくしてあげなさいね。たとえ中身が、高校生の男だって判ってても」
言いたい放題だ。自分の立場がどんどん落ちていくのを感じながら、
「こ、こちらにどうぞ……」
俺は取り繕うように言って、二階にある秋穂ちゃんの部屋に、二人を案内する。
とうぜん俺が先に階段を上り、二人が後に続く形になる。すると俺の後ろから、フユカがまたもげらげらと笑い出すのが聞こえた。
「あはっ、なにっ、下着まで可愛い女の子ってわけ!?」
「え……あ、やぁっ!」
──忘れてた。このワンピースは裾が極端に短くて、階段の下からのぞいたらたちまち中の下着が見えてしまうことに。
「やだもー、クマさんパンツなんて、今どき小学生だってはかないわよ? くくっ、確かに秋穂は持ってるかも知れないけど、あの秋穂だって、子供っぽすぎていやだって言ってるくらいなんだもの。それを──高校生にもなった男が穿いてるなんて、あははっ、どう見ても変態じゃない!」
「あ……ああっ、やだっ、見ないでよっ!」
慌ててスカートのお尻を隠すが、もう遅い。いや、むしろそんな仕草さえ、
「あらあら、そんなお子様ぱんつなんて、見えたって誰も喜ばないわよ。そんなぱんつ穿いてるようなお子ちゃまは、気にしたらおかしいわねー」
「仕方ないじゃない。むしろ、お子様ぱんつをスカートの下から見せびらかすほうが、よっぽど変態よ。高校生の男の子がそんなものを着ていること自体が変態的なのは、さておくとしても」
俺はスカートを押さえたまま、階段にしゃがみ込んだ。なんでこんな目に遭わなければいけないんだ。視界がじんわりとにじむなか、俺はしばらく、その場を立ち上がることが出来なかった。
追記:カテゴリを整理しました。
『女児転生』 第二章(6)
唐突ですが、差分イラストは難しいです。
あんまり同じ構造で、表情や腕の位置だけ替えても「使い回し臭い」「くどい」ものになってしまいます。成人向けゲームなどで、次々と差分が入れ替わっていくのに飽きさせないあたりの技術は、見習わないといけませんね。
そんなわけで、次回作ではそのあたりを考慮して、いったん差分の数をぐっと減らしています。それでも、文章+イラスト7~8点、という形になると思いますが。プ○キュア風の衣装やま○んちゃんふうの衣装など、コスプレ中心となっていますので、お好きな方はお楽しみに。オムツは……???
* * *
(6)
「あーきほちゃん、きたよーっ!」
ピンポーン、という古典的な呼び鈴のあとから、女の子の声が聞こえてくるのを、俺は絶望的な思いで聞いていた。
先ほどの、屈辱的な姿を撮影された一件から十分ほど経ち、いまの俺は新しい服に着替えさせられている。どんな服を着せられたのかなんて、思い出したくもない。少しうつむいただけで視界の隅に映る、ピンクと白のつやつやてかてかな生地を見るだけで、コレに袖を通したときに恥辱に胸が発火しそうだった。
俺にこんな服を着せた当の本人──小学生の牧本秋穂ちゃんは、何やらタンスの奥をごそごそと探っている。いったい何を探しているのか、怖くて訊くことも出来ない。
チャイムが鳴ったときも、秋穂ちゃんはタンスの奥をひっくり返してたくさんの服を並べ直していた。彼女はチャイムの音に顔を上げると、
「お兄ちゃん、秋穂のかわりにでてくれる? 秋穂、手が放せないの」
「う……うん」
俺は顔を真っ赤にして、うなずいた。先ほど撮影した映像がある限り、俺は彼女を怒らせるわけにはいかないのもあったけれど──何よりもみっともない姿で頭を床にこすりつけた上、いまだにこんな格好をしていたのでは、「隣のお兄ちゃん」面なんて出来るわけないのだ。せいぜい、「背は高くなったのにいつまでもお姉ちゃんの手を焼かせる妹」がいいところだ。
しかしこの姿で、始めて顔を見る秋穂ちゃんの友達の前に、出なければいけないのか。そう考えると、玄関に向かう足取りはしぜん重くなった。秋穂ちゃんの友達だから、おそらく小学生だろう。その小学生の前で、こんな──
そろそろと一階に降りると、玄関脇のディスプレイに、牧本家の玄関先の映像が映っていた。そこには、二人の少女が立っている。片方は、ウェーブのかかったボブカットに明るい猫目をした少女。もう一人は、眉の上と肩のあたりで切りそろえた「姫カット」に、眼鏡をかけたそばかす少女。猫目の少女が画面の中で、
「あきほちゃーん! きたよーっ、ほら、アリナも来てるーっ!」
「ちょっとフユカ、大声で叫ばなくたって聞こえるわよ。インターフォンだってあるんだし」
「えー、でも、全然返事もないってことは、聞こえてないんじゃない? だとしたらやっぱり、大声で呼ぶっきゃないじゃん」
「だからって……」
俺は彼女たちの姿を見つめながら、緊張に背筋を振るわせた。あの二人のうちでフユカと呼ばれる少女──おそらく、あのボブカットの猫目少女だろう──が、秋穂ちゃんに指示して、俺の姿をビデオカメラで撮影させた上で脅迫の種に使うことを、提案したのだ。小学生、と思って油断していたら、どんな悪質なことをされるか判ったものではない。
俺はいよいよ覚悟を決めて──
「はい、どちら様ですか?」
「え?」「お?」
インターフォンのマイクに話しかけると、玄関先の向こうで二人は戸惑った。
「誰?」「あきほの家族ではなさそうだけど」「だよねー。あきほ、一人っ子だし。って事は──もしかして、さっきのメールの?」「そうかもね。けど、ここでセンサクしても仕方ないわ」
二人のひそひそ話もマイクはしっかり拾っていて、それを聞いた俺はまた、赤くなった。やっぱり彼女たちが、秋穂ちゃんに入れ知恵をしたのだ。
すると眼鏡少女、アリナちゃんのほうが、インターフォンのカメラに向き直って凜と声を張る。
「あの、あたしたち、あきほちゃんの友達です。あきほちゃんに呼ばれてきたんですけど──あきほちゃん、いますか?」
「あ、ああ」
俺は返事をしながら、インターフォンに並ぶボタンを見ていた。同やらここで、ドアの開閉なども一括して行えるようになっているらしく、「門扉」「玄関ドア」などの文字の下に、ボタンが付いているのだ。いずれも「ロック」ランプは、ついた状態。
これを操作して、訪問者を中に招くのだ。まずは「門扉」のボタンを押しながら、
「いまドアを開けるから、そのまま入ってきて」
いよいよ二人が近づいてくる。俺はいますぐここから逃げ出したい気持ちを抑えて、インターフォンの「玄関ドア」のボタンを押した。これで、彼女たち通れとの間を隔てる障壁は何もない。画面の中では、彼女たちが軽い足取りで門扉を通り抜け、玄関前にたどり着いたところだった。
そして遂に、
「お邪魔しまーす!」
あんまり同じ構造で、表情や腕の位置だけ替えても「使い回し臭い」「くどい」ものになってしまいます。成人向けゲームなどで、次々と差分が入れ替わっていくのに飽きさせないあたりの技術は、見習わないといけませんね。
そんなわけで、次回作ではそのあたりを考慮して、いったん差分の数をぐっと減らしています。それでも、文章+イラスト7~8点、という形になると思いますが。プ○キュア風の衣装やま○んちゃんふうの衣装など、コスプレ中心となっていますので、お好きな方はお楽しみに。オムツは……???
* * *
(6)
「あーきほちゃん、きたよーっ!」
ピンポーン、という古典的な呼び鈴のあとから、女の子の声が聞こえてくるのを、俺は絶望的な思いで聞いていた。
先ほどの、屈辱的な姿を撮影された一件から十分ほど経ち、いまの俺は新しい服に着替えさせられている。どんな服を着せられたのかなんて、思い出したくもない。少しうつむいただけで視界の隅に映る、ピンクと白のつやつやてかてかな生地を見るだけで、コレに袖を通したときに恥辱に胸が発火しそうだった。
俺にこんな服を着せた当の本人──小学生の牧本秋穂ちゃんは、何やらタンスの奥をごそごそと探っている。いったい何を探しているのか、怖くて訊くことも出来ない。
チャイムが鳴ったときも、秋穂ちゃんはタンスの奥をひっくり返してたくさんの服を並べ直していた。彼女はチャイムの音に顔を上げると、
「お兄ちゃん、秋穂のかわりにでてくれる? 秋穂、手が放せないの」
「う……うん」
俺は顔を真っ赤にして、うなずいた。先ほど撮影した映像がある限り、俺は彼女を怒らせるわけにはいかないのもあったけれど──何よりもみっともない姿で頭を床にこすりつけた上、いまだにこんな格好をしていたのでは、「隣のお兄ちゃん」面なんて出来るわけないのだ。せいぜい、「背は高くなったのにいつまでもお姉ちゃんの手を焼かせる妹」がいいところだ。
しかしこの姿で、始めて顔を見る秋穂ちゃんの友達の前に、出なければいけないのか。そう考えると、玄関に向かう足取りはしぜん重くなった。秋穂ちゃんの友達だから、おそらく小学生だろう。その小学生の前で、こんな──
そろそろと一階に降りると、玄関脇のディスプレイに、牧本家の玄関先の映像が映っていた。そこには、二人の少女が立っている。片方は、ウェーブのかかったボブカットに明るい猫目をした少女。もう一人は、眉の上と肩のあたりで切りそろえた「姫カット」に、眼鏡をかけたそばかす少女。猫目の少女が画面の中で、
「あきほちゃーん! きたよーっ、ほら、アリナも来てるーっ!」
「ちょっとフユカ、大声で叫ばなくたって聞こえるわよ。インターフォンだってあるんだし」
「えー、でも、全然返事もないってことは、聞こえてないんじゃない? だとしたらやっぱり、大声で呼ぶっきゃないじゃん」
「だからって……」
俺は彼女たちの姿を見つめながら、緊張に背筋を振るわせた。あの二人のうちでフユカと呼ばれる少女──おそらく、あのボブカットの猫目少女だろう──が、秋穂ちゃんに指示して、俺の姿をビデオカメラで撮影させた上で脅迫の種に使うことを、提案したのだ。小学生、と思って油断していたら、どんな悪質なことをされるか判ったものではない。
俺はいよいよ覚悟を決めて──
「はい、どちら様ですか?」
「え?」「お?」
インターフォンのマイクに話しかけると、玄関先の向こうで二人は戸惑った。
「誰?」「あきほの家族ではなさそうだけど」「だよねー。あきほ、一人っ子だし。って事は──もしかして、さっきのメールの?」「そうかもね。けど、ここでセンサクしても仕方ないわ」
二人のひそひそ話もマイクはしっかり拾っていて、それを聞いた俺はまた、赤くなった。やっぱり彼女たちが、秋穂ちゃんに入れ知恵をしたのだ。
すると眼鏡少女、アリナちゃんのほうが、インターフォンのカメラに向き直って凜と声を張る。
「あの、あたしたち、あきほちゃんの友達です。あきほちゃんに呼ばれてきたんですけど──あきほちゃん、いますか?」
「あ、ああ」
俺は返事をしながら、インターフォンに並ぶボタンを見ていた。同やらここで、ドアの開閉なども一括して行えるようになっているらしく、「門扉」「玄関ドア」などの文字の下に、ボタンが付いているのだ。いずれも「ロック」ランプは、ついた状態。
これを操作して、訪問者を中に招くのだ。まずは「門扉」のボタンを押しながら、
「いまドアを開けるから、そのまま入ってきて」
いよいよ二人が近づいてくる。俺はいますぐここから逃げ出したい気持ちを抑えて、インターフォンの「玄関ドア」のボタンを押した。これで、彼女たち通れとの間を隔てる障壁は何もない。画面の中では、彼女たちが軽い足取りで門扉を通り抜け、玄関前にたどり着いたところだった。
そして遂に、
「お邪魔しまーす!」
『女児転生』 第二章(5)
『少年堕落』なかなか順調にDLいただけているようで、嬉しい限りです。
「強制女装」と「男の娘」は、一見同じようでいていろいろと違いがあるのですが(『少女少年』で喩えれば橘柚季と章姫一期みたいに──って判りにくいですね)、半ば強制的に始まった女装から、自発的な女装にのめり込んでいく展開も大好きです。
追記。リンク先として「萌駅」を追加しました。女装・ロリショタなどいろいろなサイトにリンクしていますので、気になった方はどうぞ。
では今週分です。
* * *
(5)
しかしさすがにこのまま、この家を出るわけにも行かない。こんな格好で外に出たくないのはもちろんだが、デリカシーのないことをして秋穂ちゃんを怒らせたのは俺なんだし、きちんと謝罪するべきところは、謝罪するべきだろう。それが、オトナの対応だ。
「秋穂ちゃん、ごめん……」
俺は扉の外から、中にいるはずの秋穂ちゃんに呼びかけた。女児用シャツに下着姿で、板張りの廊下に正座して、ひとまわり年下の女の子に向かって謝るなど、およそみっともないことこの上なかったが──それでも俺は、きちんと正座して、重く閉ざされた扉を見上げて声をかけた。
「ごめん、秋穂ちゃん。俺が悪かった。ちゃんと謝りたいから、扉を開けてくれるかな?」
「やだ。お兄ちゃんなんて知らない」
拗ねた声。しかしそれでも、俺はこっそり安堵した。こういうとき、まるで反応がなくなるか、あるいは泣き出されるのが一番厄介なのだ。拗ねているだけなら、話し合いの余地はある。
「ごめん。秋穂ちゃんがせっかく選んでくれたのに、わがまま言って。俺の方こそ、子供っぽかった」
「……ふん」
ぱたん、と小さな音がして、目の前の扉が開いた。その隙間から、秋穂ちゃんはじっと俺を見おろしている。そして、
「……ゴメンナサイしたら、許してあげる」
「うっ……ご、ごめんなさい……!」
俺は恥も外聞も捨てて、目の前の床に頭をこすりつけた。視界の上端に、かすかに秋穂ちゃんの赤い靴下が見え、普段この靴下が踏みつけている場所に額をこすりつけているかと思うと、屈辱に全身が震えた。
見ることは出来ないが、秋穂ちゃんは、足元にある俺の頭を見おろしていることだろう。彼女がいったい何を考えているのか、まったく想像も出来ない。永遠かと思えるほどの数秒が流れたあと、
「……いいわ。トクベツに、許してあげる。でも、約束があるわ」
「う、うん、なに……?」
小学生相手に何を卑屈になっているんだ俺は。そうは思うものの、いったん決まってしまった力関係はもはや覆しようもない。秋穂ちゃんに何を言われようと、俺は堪え忍び、彼女に従うしかないのだ。
「さっきみたいに、秋穂が貸してあげる服に、モンク言わないこと。いい?」
「う、うん。秋穂ちゃんが貸してくれた服には、文句をつけません」
「なら、許してあげる」
秋穂ちゃんの声に明るさが戻ったのを聞き取って、俺はほっと息をついた。そしてやっと、頭を上げて視線を上に向け──
え。
目の前に立っている秋穂ちゃんが両手に抱えているものを見て、俺は石化した。その手にあったのは、彼女の小さな指には相応しくないほど大ぶりな、デジタルカメラだったのだ。
いまの姿を、撮影された──
高校生にもなった男が、女児用のシャツとショーツというみっともない姿で、女の子の前で床に土下座している姿を撮影されたのだ。油断していた。秋穂ちゃんが、ここまで悪辣なことをするとは、思っても見なかった。
「あ、秋穂ちゃん、なんで、そんなものを……!」
思わずこぼれ落ちた声が、震えていた。
しかし秋穂ちゃん自身も、自らの行動が俺にどんな衝撃を与えたのかまったく理解していないようだった。ともすればカマトトぶっているとも思えるほど無邪気な表情で、
「ん、これ? あのね、いまケータイでフユカちゃんにソーダンしたらね、こーやってサツエーしておけば、お兄ちゃんが秋穂のこといじめなくなるって教えてくれたの。ね、ホント?」
どうやら扉の向こうで、メールか何かで友達に相談していたらしい。やられた、秋穂ちゃん自身に悪知恵が働かなくとも、ずいぶんませた──ありていに言ってたちの悪い友達がいるらしい。
「これからすぐにフユカちゃんも、アリナちゃんを連れて来てくれるって。だからお兄ちゃん、早くお着替えしないとねっ」
秋穂ちゃんはにっこり笑った。その無邪気で、悪意の全くない笑みに──俺は改めて、自分がこれからどうなるのか、恐怖に背筋を震わせた。
「強制女装」と「男の娘」は、一見同じようでいていろいろと違いがあるのですが(『少女少年』で喩えれば橘柚季と章姫一期みたいに──って判りにくいですね)、半ば強制的に始まった女装から、自発的な女装にのめり込んでいく展開も大好きです。
追記。リンク先として「萌駅」を追加しました。女装・ロリショタなどいろいろなサイトにリンクしていますので、気になった方はどうぞ。
では今週分です。
* * *
(5)
しかしさすがにこのまま、この家を出るわけにも行かない。こんな格好で外に出たくないのはもちろんだが、デリカシーのないことをして秋穂ちゃんを怒らせたのは俺なんだし、きちんと謝罪するべきところは、謝罪するべきだろう。それが、オトナの対応だ。
「秋穂ちゃん、ごめん……」
俺は扉の外から、中にいるはずの秋穂ちゃんに呼びかけた。女児用シャツに下着姿で、板張りの廊下に正座して、ひとまわり年下の女の子に向かって謝るなど、およそみっともないことこの上なかったが──それでも俺は、きちんと正座して、重く閉ざされた扉を見上げて声をかけた。
「ごめん、秋穂ちゃん。俺が悪かった。ちゃんと謝りたいから、扉を開けてくれるかな?」
「やだ。お兄ちゃんなんて知らない」
拗ねた声。しかしそれでも、俺はこっそり安堵した。こういうとき、まるで反応がなくなるか、あるいは泣き出されるのが一番厄介なのだ。拗ねているだけなら、話し合いの余地はある。
「ごめん。秋穂ちゃんがせっかく選んでくれたのに、わがまま言って。俺の方こそ、子供っぽかった」
「……ふん」
ぱたん、と小さな音がして、目の前の扉が開いた。その隙間から、秋穂ちゃんはじっと俺を見おろしている。そして、
「……ゴメンナサイしたら、許してあげる」
「うっ……ご、ごめんなさい……!」
俺は恥も外聞も捨てて、目の前の床に頭をこすりつけた。視界の上端に、かすかに秋穂ちゃんの赤い靴下が見え、普段この靴下が踏みつけている場所に額をこすりつけているかと思うと、屈辱に全身が震えた。
見ることは出来ないが、秋穂ちゃんは、足元にある俺の頭を見おろしていることだろう。彼女がいったい何を考えているのか、まったく想像も出来ない。永遠かと思えるほどの数秒が流れたあと、
「……いいわ。トクベツに、許してあげる。でも、約束があるわ」
「う、うん、なに……?」
小学生相手に何を卑屈になっているんだ俺は。そうは思うものの、いったん決まってしまった力関係はもはや覆しようもない。秋穂ちゃんに何を言われようと、俺は堪え忍び、彼女に従うしかないのだ。
「さっきみたいに、秋穂が貸してあげる服に、モンク言わないこと。いい?」
「う、うん。秋穂ちゃんが貸してくれた服には、文句をつけません」
「なら、許してあげる」
秋穂ちゃんの声に明るさが戻ったのを聞き取って、俺はほっと息をついた。そしてやっと、頭を上げて視線を上に向け──
え。
目の前に立っている秋穂ちゃんが両手に抱えているものを見て、俺は石化した。その手にあったのは、彼女の小さな指には相応しくないほど大ぶりな、デジタルカメラだったのだ。
いまの姿を、撮影された──
高校生にもなった男が、女児用のシャツとショーツというみっともない姿で、女の子の前で床に土下座している姿を撮影されたのだ。油断していた。秋穂ちゃんが、ここまで悪辣なことをするとは、思っても見なかった。
「あ、秋穂ちゃん、なんで、そんなものを……!」
思わずこぼれ落ちた声が、震えていた。
しかし秋穂ちゃん自身も、自らの行動が俺にどんな衝撃を与えたのかまったく理解していないようだった。ともすればカマトトぶっているとも思えるほど無邪気な表情で、
「ん、これ? あのね、いまケータイでフユカちゃんにソーダンしたらね、こーやってサツエーしておけば、お兄ちゃんが秋穂のこといじめなくなるって教えてくれたの。ね、ホント?」
どうやら扉の向こうで、メールか何かで友達に相談していたらしい。やられた、秋穂ちゃん自身に悪知恵が働かなくとも、ずいぶんませた──ありていに言ってたちの悪い友達がいるらしい。
「これからすぐにフユカちゃんも、アリナちゃんを連れて来てくれるって。だからお兄ちゃん、早くお着替えしないとねっ」
秋穂ちゃんはにっこり笑った。その無邪気で、悪意の全くない笑みに──俺は改めて、自分がこれからどうなるのか、恐怖に背筋を震わせた。