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長編『禁じられた遊び』 (16)
登場人物
上村 大海(うえむら ひろみ)……中学一年生の少年。
天野 聡子(あまの さとこ)……大海の同級生。
あらすじ
中学生の上村大海は、ある日、同級生の天野聡子に誘われて、空き教室で彼女の制服を着てみることになる…。
ピクシブにもまとめました → 禁じられた遊び
(16)
夕焼けに染まる廊下に突然現れた若い男性のは、ほかならぬ、ぼくらのクラスの担任教師だった。当然、毎日のように顔を合わせている相手だ。
その瞬間、ふいにぼくは現実に帰ったような戦慄を覚えた。
先生に、見られている。男子のくせに、こんな女子制服を着て先生の前にいるんだ。
寒気にも似た羞恥心が全身に襲い掛かり、怖くなってたぼくはとっさに、天野さんの後ろに隠れた。
先生は「おや」という顔をして、
「何やってるんだ、二人とも――って、天野じゃないか」
「ごめんなさい、先生。ちょっと空き教室で勉強してたら、遅くなっちゃって」
何の勉強だか、ってツッコミは心の中にしまい込み、ぼくは天野さんに任せる。
先生は苦笑いして、
「熱心なのはいいが、あんまり遅くまでやるなよ。完全下校時刻が近づいたら、早めに帰るように」
「はい、判りました」
「そっちの子も」
とつぜん先生が、ぼくに目を向けた。どうしよう、と冷や汗を流していると
「どこのクラスの子か知らないが、あまり遅くならないように。次に見かけたら、担任の先生に報告するからな。気を付けてくれ」
「は、はい……」
ぼくは、できるだけ女の子に聞こえるような声で言った。前にいる天野さんの肩が震えているのは、笑いをこらえているんだろう。
「それじゃあ先生、失礼します」
「ああ、早めに帰れよ」
ぼくらは先制の脇を通って、廊下を歩きだす――
その時、ふいに先生がぼくらの背中に声をかけてきた。
「そうだ、天野、上村――」
名前を呼ばれて、血が凍った。ばれた、と思った。燃えるような夕焼け色に染まった景色が、冷たく見えるほどだった。
天野さんも緊張したんだろう、はっと驚いた表情で先生を振り返る。
そんなぼくたちに向かって、先生は――
「――に明日あったら、進路指導のプリントを早めに提出するように伝えてくれ」
紛らわしい。ぼくはその場に脱力しそうになるほどほっとした。心臓のあたりが、ずきずき痛んでいた。
「はい、わかりました」
天野さんも安堵の表情で答え、
「でも先生、急にどうしたんです? 上村くん以外にも、出してない人はいるのに」
「ん? ああ……なんでだろうな。急に思い出したんだ。悪かったな、もう帰ってくれ」
失礼します、といって、ぼくたちは急ぎ足に廊下を曲がり、階段を下りた。先生の視線がなくなっただけで、肩の荷が一気に下りたような気分だった。
天野さんはおかしそうに笑いながら、
「くすくすっ、ばれたかと思って、びっくりしたわね」
「ほんと、肝が冷えたよ……」
女子制服を着てると楽しいけど、でも、今は早く着替えたい。ぼくらは学校を出て、天野さんの家へと向かっていった。
(続く)
上村 大海(うえむら ひろみ)……中学一年生の少年。
天野 聡子(あまの さとこ)……大海の同級生。
あらすじ
中学生の上村大海は、ある日、同級生の天野聡子に誘われて、空き教室で彼女の制服を着てみることになる…。
ピクシブにもまとめました → 禁じられた遊び
(16)
夕焼けに染まる廊下に突然現れた若い男性のは、ほかならぬ、ぼくらのクラスの担任教師だった。当然、毎日のように顔を合わせている相手だ。
その瞬間、ふいにぼくは現実に帰ったような戦慄を覚えた。
先生に、見られている。男子のくせに、こんな女子制服を着て先生の前にいるんだ。
寒気にも似た羞恥心が全身に襲い掛かり、怖くなってたぼくはとっさに、天野さんの後ろに隠れた。
先生は「おや」という顔をして、
「何やってるんだ、二人とも――って、天野じゃないか」
「ごめんなさい、先生。ちょっと空き教室で勉強してたら、遅くなっちゃって」
何の勉強だか、ってツッコミは心の中にしまい込み、ぼくは天野さんに任せる。
先生は苦笑いして、
「熱心なのはいいが、あんまり遅くまでやるなよ。完全下校時刻が近づいたら、早めに帰るように」
「はい、判りました」
「そっちの子も」
とつぜん先生が、ぼくに目を向けた。どうしよう、と冷や汗を流していると
「どこのクラスの子か知らないが、あまり遅くならないように。次に見かけたら、担任の先生に報告するからな。気を付けてくれ」
「は、はい……」
ぼくは、できるだけ女の子に聞こえるような声で言った。前にいる天野さんの肩が震えているのは、笑いをこらえているんだろう。
「それじゃあ先生、失礼します」
「ああ、早めに帰れよ」
ぼくらは先制の脇を通って、廊下を歩きだす――
その時、ふいに先生がぼくらの背中に声をかけてきた。
「そうだ、天野、上村――」
名前を呼ばれて、血が凍った。ばれた、と思った。燃えるような夕焼け色に染まった景色が、冷たく見えるほどだった。
天野さんも緊張したんだろう、はっと驚いた表情で先生を振り返る。
そんなぼくたちに向かって、先生は――
「――に明日あったら、進路指導のプリントを早めに提出するように伝えてくれ」
紛らわしい。ぼくはその場に脱力しそうになるほどほっとした。心臓のあたりが、ずきずき痛んでいた。
「はい、わかりました」
天野さんも安堵の表情で答え、
「でも先生、急にどうしたんです? 上村くん以外にも、出してない人はいるのに」
「ん? ああ……なんでだろうな。急に思い出したんだ。悪かったな、もう帰ってくれ」
失礼します、といって、ぼくたちは急ぎ足に廊下を曲がり、階段を下りた。先生の視線がなくなっただけで、肩の荷が一気に下りたような気分だった。
天野さんはおかしそうに笑いながら、
「くすくすっ、ばれたかと思って、びっくりしたわね」
「ほんと、肝が冷えたよ……」
女子制服を着てると楽しいけど、でも、今は早く着替えたい。ぼくらは学校を出て、天野さんの家へと向かっていった。
(続く)
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