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SS「謝罪の方法」 (1)
謝罪の方法 (1)
「ごめん、ほんっとにごめん!」
両手を合わせて拝み倒す。
目の前では、亮司が腕を組んでむっすりと座り込んでいた。さっきからずっと、目を合わせてくれない。筋肉質な体の下で、ベッドが抗議するように軋む。
――休日の、昼下がりのことだった。
この日ぼく――沢野御影(さわのみかげ)と、大堂亮司(だいどうりょうじ)は、都心のほうまで遊びに行く予定になっていた。ぼくらの住んでいる町から都心までは、電車に揺られて40分以上かかる。だから午前中に出ないと、ほとんど向こうでは遊べないのだ。
ところが。
ぼくはついつい寝過ごしてしまい、午後の2時になってようやく亮司からのメールで目を覚まし――こうして彼の部屋で、平謝りに謝っているというわけだった。
「せっかく前々から予定たてて、楽しみにしてたのによ……」
亮司はすっかりおかんむりだ。メインの目的だったアイドルのサイン会に行けなかったのがよほど不満だったようだ。それなら一人で行けばよかったのに、と思わないでもないけれど、ずっとぼくを待っててくれてたんだから仕方ない。嬉しいような、申し訳ないような。
「本当にごめんって……埋め合わせはするから!」
「埋め合わせ、ねぇ」
意地悪そうな目をして、亮司はやっとこちらを見た。
「なら、何でもしてくれる?」
「ぼくに、出来ることなら……」
答えたものの、なんだか急に不安になってきた。亮司の目が、まるで得物を見つけた肉食獣みたいに爛々と光っていたからだ。
「あ、あんまり無茶なことは言うなよ! お金はないし、警察沙汰になるような罰ゲームもごめんだからな!」
「そんな意地悪は言わないって。ちょっと待ってろ、準備するからな」
そう言い残すと、亮司は立ち上がって部屋を出ていった。
いったい何を言われるんだろう――不安になりながら待つこと5分、彼が両手に抱えているものを見て、ぼくは思わず声をひっくり返した。
「なっ、なんだよそれっ……!?」
「おいおい、もう見忘れたのか? 俺たちが去年まで通ってた学校の制服だろうが」
確かにそうだ。ぼくだって、別に忘れてなんていない。
ただ、その制服は――
「なんで亮司、お前、女子制服なんて持ってるんだよ!?」
「ああ、早季子の部屋から、ちょっくら借りてきた」
「お前、怒られるぞ……って、そうじゃなくて! なんでそんなものを持ってきたのかって意味で、聞いてるんだよ!」
白いブラウスに、水色のチェックが鮮やかなベストとプリーツスカート。襟元には黄色のリボンを結ぶそれは、ぼくらが去年まで着ていた男子制服ではなく、女子が着ていた制服であった。
なんで亮司が、そんなものを持ってきたのか――それも、よりにもよってこのタイミングで。導かれる答えは一つしかない。この上ない、羞恥に満ちた答えしか。
「ま、まさか、それを……」
「おっ、いいカンしてるじゃん」
亮司はにやりと笑って制服を差し出すと、
「まずは、この制服を着てもらおうか。何でもするって、言ったよな?」
(続く)
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