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短編「親友彼女」 その14
(その14)
「ひょっとして、俊示君じゃない?」
その主婦は、ぼくたちのほうに近づいてくるなりそう言った。
俊示は一瞬ギクッとした表情になったが、すぐに作り笑いを浮かべて、
「どうも、葉山のお母さん。おひさしぶりです」
「ほんと、三年ぶりくらいかしらねぇ。ずいぶん大きくなっちゃって。いま、どこに通ってるの?」
「一応、県立に……」
「まぁまぁ、すごいじゃない。うちの子ももっと勉強してれば、県立くらい入れたのにねぇ」
「ヒロ──葉山君は野球の推薦枠でしたよね。そっちのほうが、すごいと思いますよ」
「あら、お世辞でもそう言ってもらえると、おばさんもうれしいわぁ」
葉山と呼ばれたおばさんはころころと笑っていたが、ふとこっちをみて不思議そうな顔をした。思わず俊示の陰に隠れ、服の裾にすがりついてしまう。
これじゃまるで、本当に恥ずかしがり屋の女の子みたいじゃないか。顔が赤くなるのが、自分でもわかった。
「あら、そっちの子、どなたかしら。たしか俊示君、一人っ子だったわよね」
「え、ええと……」
俊示は一瞬どもる。ざまぁみろ、ぼくをこんな風に連れ出すからだとおもったけど、女子小学生の制服を着ているのはぼく自身なんだから笑えない。
「ええと、その、従妹の子です。な、祥子」
「う、うん」
「あら、そうなの。ふふっ、可愛い子じゃない。ずいぶん大きい子みたいだけど、小学生かしら?」
「ええ。これでも小学生なんです」
すっかり調子を取り戻したのか、俊示はぼくを振り向いて意味ありげに笑う。そして、とんでもないことを言い出した。
「ほら、祥子。俺の友達のお母さんで、葉山さんっていうんだ。ご挨拶しなさい」
「えっ、や、やだ、恥ずかしいよ……」
「こら、もう六年生なんだから、挨拶くらいちゃんとしなさい」
俊示は年上ぶって言いながら、ぼくを葉山さんの前に押し出した。
高校生にもなって、女子小学生の制服を着て挨拶だなんて――恥ずかしさに、普段ならちゃんと動くはずの舌もまわらない。ぼくは本当に小学六年生に戻ってしまったみたいな舌足らずな口調で、
「は、初めまして――」
ゆっくりと、恥ずかしい自己紹介を口にした。
「小学、六年生の、瀬川、祥太です。よろしく――」
「え?」
おばさんの驚く声に、ぼくは致命的な失言を犯したことに気付いた。
「瀬川、祥太君……?」
(続く)
コメント
ちょっ、、そう来ましたか
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完全に意表を突かれてしまいました。おかげできましたよ~ぐっときました。