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短編「親友彼女」 その12
(その12)
小学生の女の子のような姿で、同級生に妹としておねだりしてしまった──それも、リアル小学生たちの目の前で──
「はっはっは、祥子は恥ずかしがり屋だなぁ。小学生なんだから、制服を着てたっておかしくないだろ?」
こ、こいつ……!
「ほら、せっかくだから、小学校の前で記念撮影しようぜ。校門の前に立って、ピースしてみろって」
「ほ、本気……?」
「もちろん。お兄ちゃんがちゃんと、祥子の可愛い姿を撮影してやるからな」
「う、うぅっ……」
こいつはいったい、どれだけぼくに恥ずかしい思いをさせたら気が済むんだ。そう言いたいのをぐっとこらえて、校門の前まで歩いていく。
振り返ると、俊示がこちらにスマートフォンのカメラレンズを向けていた。どうやら本気で記念撮影するつもりらしい。もう、泣きそうだった。
「もうちょっと、右に立って。そうそう、小学校の名前が見えるように。いいぞ、それじゃあにっこり笑ってみようか。いちたすいちはー?」
「ね、ねぇ、お兄ちゃん……もう、やめようよぉ……」
「おいおい、何が気に入らないんだ。ほら、笑って。いちたすいちはー?」
「に、にぃー……」
泣きそうになりながら、ぼくは答える。「いちたすいちは、にー」だなんて、一体何年ぶりのフレーズだろう。ただでさえ、こんな制服にランドセルをしょわされているのに、いよいよ本当に小学生になったような気分だった。
しかし俊示は、簡単に許してくれない。
「ほら、なんでそんな、泣きそうな顔なんだよ。もっと自然に笑えって。いちたすいちはー?」
「うっ、ううーっ……に、にぃーっ!」
やけくそで、思いっきり笑顔のような表情を作ってみせる。すると俊示の手元が光り、
「よーし、いい写真が取れたぞ。ほら、見て見ろよ」
近づいてきた俊示が、スマートフォンの画面をこちらに向ける。
そこに映っていたのは、半泣きになりながらも笑顔を作ってピースする、女子小学生──いや、女子小学生の格好をした男子高校生、つまりぼくの姿だった。この年になった男が、小学生の校門前でこんな格好をしているだなんて、一生モノの恥辱だ。
「お、お兄ちゃん……お願いだから、その写真、消して……いくらなんでも、恥ずかしいよぉ……」
「おいおい、せっかく可愛い写真が取れたのに、消すだなんてもったいないことするかよ。これはスマフォの待ち受けにして、可愛い祥子の姿をいつでも見られるようにするぜ。安心しな、人に見られたら、妹の写真ですって自慢するからよ」
「そ、そんなっ……!」
スマートフォンは、高校にも持っていく。そんなものの待ち受けに、一生モノの恥ずかしい画像を使われるなんて──クラスメイト達に見つかってばれたら、どうするんだ。
ぼくは目の前が真っ暗になる気分だった。
(続く)
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