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短編「親友彼女」 その4
どうもこんばんは、神無月です。
先々週、先週と関東に降った大雪のせいで、土日は雪かきに追われていました。盆地で吹き溜まりになったせいもありますが、50センチ以上の雪は生まれて初めてで、シャベルで道路の隅に積み上げた雪が、まだ溶け残っています。
そんなわけで更新も久しぶり。拍手、コメントくださった方々、ありがとうございます。皆さんの応援を励みに、できる限り更新していきたいと思います。
それでは続きを読むからどうぞ。
蛇足:SSのつもりで書き始めたのが、やや長くなりそうな予感です。
(その4)
とつぜんのチャイム。両親も出かけているし、となるとぼくが出るよりほかにはない。
「はいはい、ちょっと待ってくださいな」
小さくつぶやいて、散らかった部屋もそのまま階段を降り、玄関に向かった。
休日の昼間、こんな時間に来るのはセールスか宗教と相場は決まっている。どっちにしても玄関先でお引き取り願うに限る。廊下にあるインターフォンのボタンを押してカメラをつけると、大柄な男がこちらを見上げて、つま先で足元を蹴りながら言った。
『おーい祥太ぁ、いるんだろ』
「なんだ、俊示か」
中学の頃からの友人、加納俊示である。中学の頃の同級生の大半が県立高校に進んだ中、たまたま同じ私立の高校に通っていることもあって、親友と呼んでもいい間柄だ──と、ぼくは勝手に思っている。
「ちょっと待って、今開けるから」
玄関の鍵を開けると、俊示は「お邪魔するぞー」と言いながら入ってきた。うちには何度も来ているので、遠慮なく靴を脱いで上がりこむ。我が家の狭い玄関だと、小人国にやってきたガリバーみたいに見えた。
あがりかまちに座り込んで靴を脱ぐ俊示の背中に、ぼくは話しかける。
「急に来るなんて、珍しいじゃない」
「家にいても退屈だし、それならお前と一緒にゲームでもと思ってさ。それと、さっき携帯に電話したんだぜ。話し中で出なかったけど」
「あ、さっき従妹から電話が来てたから。しっかし、もし俺がいなかったらどうするつもりだったんだよ」
「その時はおとなしく帰ったさ。昨日は一日家にいるみたいなことを言ってたから、いるだろうと思ってな」
「とりあえず部屋に上がってよ。飲み物でも用意してるから」
「おう、よろしくなー」
俊示は靴を脱ぎ終えると、重たげな足取りで階段を昇って行った。
それにしてもすごい体格だ──その背中を見上げると、いつも思う。
身長は優に一八〇センチを超え、それに見合うだけ手足も長い。体重も、引き締まった筋肉の付き具合から見て七〇キロはある。掘りの深い顔に猛禽のような鼻、どこか日本人離れした造形は、まずまずハンサムだ。スーツを着込んで真面目な顔をすればたちまち女の子が群がってきそうだけど、あいにく寝起きみたいに眠たげな目つきと、汗臭そうなジャージを着ているせいで、それほどの霊験はなくなっている。
もうちょっと容姿に気を遣えば、彼女の一人や二人すぐにできるだろうに──まぁそのおかげで、ぼくみたいなのと友人づきあいしてくれているんだろうけど。
なんて余計なことを考えながら、台所に行き、ダージリンの缶を開けて紅茶を淹れる。喫茶店を経営してるお母さんに教わったやり方だ。
俊示は一見、紅茶よりコーラのほうが好きそうな顔をしてるくせに、実はかなりの紅茶党だった。前に一度入れてあげたところすっかり気に入ってしまい、以来、彼が家に来るときは紅茶を淹れてあげるのが習わしになっていた。
二人分の紅茶をマグカップに入れて二階に上がる。だいたいぼくが紅茶を持って部屋に入ると、俊示は僕のベッドに腰掛けて、のんびり漫画を読んで待っているのが常だった。
けれど、このときは──
「おい、祥太」
ドアを開けると、俊示は部屋の真ん中に座り込み、段ボール箱──従妹からのおさがりが詰め込まれた箱を見下ろしていた。
「この服、いったいどうしたんだ?」
(続く)
先々週、先週と関東に降った大雪のせいで、土日は雪かきに追われていました。盆地で吹き溜まりになったせいもありますが、50センチ以上の雪は生まれて初めてで、シャベルで道路の隅に積み上げた雪が、まだ溶け残っています。
そんなわけで更新も久しぶり。拍手、コメントくださった方々、ありがとうございます。皆さんの応援を励みに、できる限り更新していきたいと思います。
それでは続きを読むからどうぞ。
蛇足:SSのつもりで書き始めたのが、やや長くなりそうな予感です。
(その4)
とつぜんのチャイム。両親も出かけているし、となるとぼくが出るよりほかにはない。
「はいはい、ちょっと待ってくださいな」
小さくつぶやいて、散らかった部屋もそのまま階段を降り、玄関に向かった。
休日の昼間、こんな時間に来るのはセールスか宗教と相場は決まっている。どっちにしても玄関先でお引き取り願うに限る。廊下にあるインターフォンのボタンを押してカメラをつけると、大柄な男がこちらを見上げて、つま先で足元を蹴りながら言った。
『おーい祥太ぁ、いるんだろ』
「なんだ、俊示か」
中学の頃からの友人、加納俊示である。中学の頃の同級生の大半が県立高校に進んだ中、たまたま同じ私立の高校に通っていることもあって、親友と呼んでもいい間柄だ──と、ぼくは勝手に思っている。
「ちょっと待って、今開けるから」
玄関の鍵を開けると、俊示は「お邪魔するぞー」と言いながら入ってきた。うちには何度も来ているので、遠慮なく靴を脱いで上がりこむ。我が家の狭い玄関だと、小人国にやってきたガリバーみたいに見えた。
あがりかまちに座り込んで靴を脱ぐ俊示の背中に、ぼくは話しかける。
「急に来るなんて、珍しいじゃない」
「家にいても退屈だし、それならお前と一緒にゲームでもと思ってさ。それと、さっき携帯に電話したんだぜ。話し中で出なかったけど」
「あ、さっき従妹から電話が来てたから。しっかし、もし俺がいなかったらどうするつもりだったんだよ」
「その時はおとなしく帰ったさ。昨日は一日家にいるみたいなことを言ってたから、いるだろうと思ってな」
「とりあえず部屋に上がってよ。飲み物でも用意してるから」
「おう、よろしくなー」
俊示は靴を脱ぎ終えると、重たげな足取りで階段を昇って行った。
それにしてもすごい体格だ──その背中を見上げると、いつも思う。
身長は優に一八〇センチを超え、それに見合うだけ手足も長い。体重も、引き締まった筋肉の付き具合から見て七〇キロはある。掘りの深い顔に猛禽のような鼻、どこか日本人離れした造形は、まずまずハンサムだ。スーツを着込んで真面目な顔をすればたちまち女の子が群がってきそうだけど、あいにく寝起きみたいに眠たげな目つきと、汗臭そうなジャージを着ているせいで、それほどの霊験はなくなっている。
もうちょっと容姿に気を遣えば、彼女の一人や二人すぐにできるだろうに──まぁそのおかげで、ぼくみたいなのと友人づきあいしてくれているんだろうけど。
なんて余計なことを考えながら、台所に行き、ダージリンの缶を開けて紅茶を淹れる。喫茶店を経営してるお母さんに教わったやり方だ。
俊示は一見、紅茶よりコーラのほうが好きそうな顔をしてるくせに、実はかなりの紅茶党だった。前に一度入れてあげたところすっかり気に入ってしまい、以来、彼が家に来るときは紅茶を淹れてあげるのが習わしになっていた。
二人分の紅茶をマグカップに入れて二階に上がる。だいたいぼくが紅茶を持って部屋に入ると、俊示は僕のベッドに腰掛けて、のんびり漫画を読んで待っているのが常だった。
けれど、このときは──
「おい、祥太」
ドアを開けると、俊示は部屋の真ん中に座り込み、段ボール箱──従妹からのおさがりが詰め込まれた箱を見下ろしていた。
「この服、いったいどうしたんだ?」
(続く)
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