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『少年かぐや』 第十四回(中編)
こんばんは、神無月です。
書いていたら長くなって収まりがつかなくなってきたので、今回は前・中・後の三分割にします。
ではどうぞ。
* * *
郵便局で、局員たちの注目を浴びながら払い込みを済ませたころには、俊吾の精神力は限界まで低下していた。
そのため断る口実を考えるほどの気力もわかず、けっきょくそのまま、住宅街にある彼女の家へ行ったのだが――
「はい、これ。借りてたCD」
俊吾がリビングに通されて牛乳(「赤ちゃんにはミルクだよね、母乳は出ないけど我慢して」と言われて出されたのが恥ずかしかった)を飲んでいると、自室から戻ってきたらしい少女がCDを手渡した。
――のはいいのだが、彼女が両手に抱えているものを見て、俊吾はあっと叫んだ。白い襟の紺セーラーに白いプリーツスカートは、俊吾たちが通う高校の女子制服だった。
俊吾はおそるおそる、
「な、なんでそんなものを、も、持ってきたの?」
なんでって、俊ちゃんに着せるために決まってるじゃない――そんな答えを予想していた俊吾に、彼女は会心の笑みとともに、さらにとんでもないことを口にした。
「決まってるじゃない。来週から、これが俊ちゃんの制服になるからよ」
「い、いったい何を言い出すんだよ! 俺がそんな、女子制服を……!」
「あーら、そんな可愛らしいベビー服でお外を歩ける俊ちゃんが、女子制服くらいでビビるなんて、らしくないじゃん」
「そ、それは……」
「嫌だって言うなら、いいわよ? 俊ちゃんの可愛らしい姿をこうして――」
言うが早いか、少女の右手のスマートフォンが「カシャッ」と音を立てた。俊吾が青くなるのを楽しそうに眺めながら、
「こうして写真にとって、クラス中に広めてあげるから。俊ちゃんはベビー服を着るのが趣味なんだ、って言ってね」
「そ、そんな……なんでそんな酷いことを!」
少女はにやにや笑って答えない。ほんのりと頬が桜色に染まったのが、わずかに彼女の内心を洗わしていたが、いまの俊吾にはそれに気付くほどの余裕はなかった。
「だって、男子制服のズボンじゃ、オムツを当てたまま登校できないっしょ? スカートならちょっと膨らんで目立つ程度だし」
「お、オムツを当てて学校になんか……!」
「だめだめ。学校の制服だけ普通だなんて、そんな中途半端じゃ面白くないし。それに、おっぱい吸いながらお漏らししちゃったくらいだから、学校でもお漏らししないとも限らないでしょ? オムツをつけておけば安心よ」
「い、いやだ、そんなの……!」
俊吾は目の前が真っ暗になった。唯一残された「学校」という逃げ場は、最悪の羞恥の現場となりそうだった。来週からの学校生活がどのようなものに変貌するのか、俊吾はいまから、絶望的な気分になるのだった。
(後編へ続く)
書いていたら長くなって収まりがつかなくなってきたので、今回は前・中・後の三分割にします。
ではどうぞ。
* * *
郵便局で、局員たちの注目を浴びながら払い込みを済ませたころには、俊吾の精神力は限界まで低下していた。
そのため断る口実を考えるほどの気力もわかず、けっきょくそのまま、住宅街にある彼女の家へ行ったのだが――
「はい、これ。借りてたCD」
俊吾がリビングに通されて牛乳(「赤ちゃんにはミルクだよね、母乳は出ないけど我慢して」と言われて出されたのが恥ずかしかった)を飲んでいると、自室から戻ってきたらしい少女がCDを手渡した。
――のはいいのだが、彼女が両手に抱えているものを見て、俊吾はあっと叫んだ。白い襟の紺セーラーに白いプリーツスカートは、俊吾たちが通う高校の女子制服だった。
俊吾はおそるおそる、
「な、なんでそんなものを、も、持ってきたの?」
なんでって、俊ちゃんに着せるために決まってるじゃない――そんな答えを予想していた俊吾に、彼女は会心の笑みとともに、さらにとんでもないことを口にした。
「決まってるじゃない。来週から、これが俊ちゃんの制服になるからよ」
「い、いったい何を言い出すんだよ! 俺がそんな、女子制服を……!」
「あーら、そんな可愛らしいベビー服でお外を歩ける俊ちゃんが、女子制服くらいでビビるなんて、らしくないじゃん」
「そ、それは……」
「嫌だって言うなら、いいわよ? 俊ちゃんの可愛らしい姿をこうして――」
言うが早いか、少女の右手のスマートフォンが「カシャッ」と音を立てた。俊吾が青くなるのを楽しそうに眺めながら、
「こうして写真にとって、クラス中に広めてあげるから。俊ちゃんはベビー服を着るのが趣味なんだ、って言ってね」
「そ、そんな……なんでそんな酷いことを!」
少女はにやにや笑って答えない。ほんのりと頬が桜色に染まったのが、わずかに彼女の内心を洗わしていたが、いまの俊吾にはそれに気付くほどの余裕はなかった。
「だって、男子制服のズボンじゃ、オムツを当てたまま登校できないっしょ? スカートならちょっと膨らんで目立つ程度だし」
「お、オムツを当てて学校になんか……!」
「だめだめ。学校の制服だけ普通だなんて、そんな中途半端じゃ面白くないし。それに、おっぱい吸いながらお漏らししちゃったくらいだから、学校でもお漏らししないとも限らないでしょ? オムツをつけておけば安心よ」
「い、いやだ、そんなの……!」
俊吾は目の前が真っ暗になった。唯一残された「学校」という逃げ場は、最悪の羞恥の現場となりそうだった。来週からの学校生活がどのようなものに変貌するのか、俊吾はいまから、絶望的な気分になるのだった。
(後編へ続く)
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