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『少年かぐや』 第十四回(前編)
こんにちは、神無月です。
昨日更新できなかったため、本日二回、更新したいと思います。
新作のほうはイラストもおおむね仕上がり、ちょこちょこと修正を加えて来週末には登録申請したいと考えています。今回イラストは基本3枚+差分となりますが、うち1枚はかなり大規模な差分(衣装・背景ごと差分)なので、実質4枚となっています。
まだ完成となっていませんが、期待してくださると嬉しいです。
由雨さん、コメントありがとうございます。「女装旅行」について、既に文章への手入れは終わったのですが、イラストのほうがなかなか進まず、けっきょく新作のほうにかかりきりになってしまいました。年末までにはなんとかしたいと思っていますが、イラストに手をかけると時間がかかってしまいますので、いましばらくお待ちいただければと思います。
それでは、今週分をどうぞ。
* * * * *
(第十四回)
「あれ、羽鳥くん?」
少女の透き通った声に、俊吾ははっと振り向いた。振り向いてしまってから、自分が致命的なミスを犯したことに気付いたがもう遅かった。
セーラー服姿で自転車にまたがった少女が、目を丸くして見つめていた。野暮ったい眼鏡にお下げ髪のその少女は、見覚えのある相手――どころではない。小中高と同じ学校に通う、幼馴染みのような間柄だ。
お互いに、相手の性格は知り尽くしている。俊吾は彼女が、にんまりと笑って目を細めるのを予想し――彼女はその通りの表情で、俊吾を上から下まで眺め回した。
「へぇ、ふぅん、ほぉほぉ、なるほど……」
「そ、その、これは……!」
一気呵成に説明しようと口を開いた途端、おしゃぶりが落ちた。
はっとして下を見ると、首から提げた紐にぶら下がったおしゃぶりが、胸元で揺れている。赤ちゃんが口からおしゃぶりを放してもいいようにと作られた小物だった。
しかしそんな小物のせいで、慌てて説明しようとした俊吾の勢いは、著しくそがれてしまった。
「す、好きでこんな服を着てるんじゃなくて、家族に無理矢理着せられて……」
「ふぅーん、無理矢理、ねぇ? ま、そう言うことにしておいてあげましょ」
「しておいてあげましょって……本当なのに……」
「まーまー。よく似合ってるよ、スカートの中、オムツ、当ててるんでしょ?」
「あ、ああ……」
これだけたっぷり膨らんでいるのだ。隠しても無駄だった。
「それにしても、大きなロンパースねぇ。手作り?」
「ち、違うって。これは、通販で……」
俊吾は一通り、これまでのことを説明した。突然ベビー服が自分の名前で届いたこと、近所の主婦たちにベビー服を着せられて、ベビー服のまま、代金の振り込みに行くように言われたこと。ただ、最初に自分が「かぐや姫」を見ていたことだけは伏せた。
その間、信号は何度も青と赤を繰り返していた。俊吾としては一刻も早くこの場を立ち去って、クラスメイトの少女の前からいなくなりたいのだが、どうせすぐに追いつかれるのだし、走って余計に目立つようなことも避けたかった。
話を聞き終わった少女はふんふんとうなずいて、
「なるほどねー。そうだ、あとでうちに来ない? いま、うちに家族は誰もいないし、いいでしょ?」
「ど、どうして……?」
「この前借りたCD、すっかり忘れてたからね」
「ああ、そう言えば……でも、何もこんな時に……」
「学校で帰そうと思っても、つい持って行くの忘れちゃうんだよねー」
少女は白い歯を見せて笑うが、この格好のまま彼女の家に行くのは恥ずかしかった。いったい何と言って断ろうか迷っていると、
「……あ、ほら、ちょうど信号が青になったよ」
「あ、うん」
お下げ眼鏡の少女に促され、俊吾は彼女とともに、横断歩道を渡り始めた。すぐ目の前に止まっている自動車の運転手が、じっと見つめるのを感じながら。
(中編に続く)
昨日更新できなかったため、本日二回、更新したいと思います。
新作のほうはイラストもおおむね仕上がり、ちょこちょこと修正を加えて来週末には登録申請したいと考えています。今回イラストは基本3枚+差分となりますが、うち1枚はかなり大規模な差分(衣装・背景ごと差分)なので、実質4枚となっています。
まだ完成となっていませんが、期待してくださると嬉しいです。
由雨さん、コメントありがとうございます。「女装旅行」について、既に文章への手入れは終わったのですが、イラストのほうがなかなか進まず、けっきょく新作のほうにかかりきりになってしまいました。年末までにはなんとかしたいと思っていますが、イラストに手をかけると時間がかかってしまいますので、いましばらくお待ちいただければと思います。
それでは、今週分をどうぞ。
* * * * *
(第十四回)
「あれ、羽鳥くん?」
少女の透き通った声に、俊吾ははっと振り向いた。振り向いてしまってから、自分が致命的なミスを犯したことに気付いたがもう遅かった。
セーラー服姿で自転車にまたがった少女が、目を丸くして見つめていた。野暮ったい眼鏡にお下げ髪のその少女は、見覚えのある相手――どころではない。小中高と同じ学校に通う、幼馴染みのような間柄だ。
お互いに、相手の性格は知り尽くしている。俊吾は彼女が、にんまりと笑って目を細めるのを予想し――彼女はその通りの表情で、俊吾を上から下まで眺め回した。
「へぇ、ふぅん、ほぉほぉ、なるほど……」
「そ、その、これは……!」
一気呵成に説明しようと口を開いた途端、おしゃぶりが落ちた。
はっとして下を見ると、首から提げた紐にぶら下がったおしゃぶりが、胸元で揺れている。赤ちゃんが口からおしゃぶりを放してもいいようにと作られた小物だった。
しかしそんな小物のせいで、慌てて説明しようとした俊吾の勢いは、著しくそがれてしまった。
「す、好きでこんな服を着てるんじゃなくて、家族に無理矢理着せられて……」
「ふぅーん、無理矢理、ねぇ? ま、そう言うことにしておいてあげましょ」
「しておいてあげましょって……本当なのに……」
「まーまー。よく似合ってるよ、スカートの中、オムツ、当ててるんでしょ?」
「あ、ああ……」
これだけたっぷり膨らんでいるのだ。隠しても無駄だった。
「それにしても、大きなロンパースねぇ。手作り?」
「ち、違うって。これは、通販で……」
俊吾は一通り、これまでのことを説明した。突然ベビー服が自分の名前で届いたこと、近所の主婦たちにベビー服を着せられて、ベビー服のまま、代金の振り込みに行くように言われたこと。ただ、最初に自分が「かぐや姫」を見ていたことだけは伏せた。
その間、信号は何度も青と赤を繰り返していた。俊吾としては一刻も早くこの場を立ち去って、クラスメイトの少女の前からいなくなりたいのだが、どうせすぐに追いつかれるのだし、走って余計に目立つようなことも避けたかった。
話を聞き終わった少女はふんふんとうなずいて、
「なるほどねー。そうだ、あとでうちに来ない? いま、うちに家族は誰もいないし、いいでしょ?」
「ど、どうして……?」
「この前借りたCD、すっかり忘れてたからね」
「ああ、そう言えば……でも、何もこんな時に……」
「学校で帰そうと思っても、つい持って行くの忘れちゃうんだよねー」
少女は白い歯を見せて笑うが、この格好のまま彼女の家に行くのは恥ずかしかった。いったい何と言って断ろうか迷っていると、
「……あ、ほら、ちょうど信号が青になったよ」
「あ、うん」
お下げ眼鏡の少女に促され、俊吾は彼女とともに、横断歩道を渡り始めた。すぐ目の前に止まっている自動車の運転手が、じっと見つめるのを感じながら。
(中編に続く)
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