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十月兔

強制女装を中心とした小説・イラストのブログです。

2024-05

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『少年かぐや』 第四回

 神無月です。今週分の更新をお届けしたところで、とりあえず書きためた分は終了です。

 海外では「大人サイズのベビー服」を取り扱っているショップサイトは多く、テレビ番組で取り上げられたり、「CSI:科学捜査班」という有名なドラマの中でも描かれたりしています。また日本でも、いくつか専門的なショップサイトがあり、オークションでも大人向けのベビー服が出品されたりしています。
 今回の話はそうしたお店をさらに一歩進めて、ベビー服や女児服、女子制服や、コスプレ衣装のたぐいまですべて取り扱っているお店として、「かぐや姫」を考えました。こんなお店が近所にあったら、ぜひ行ってみたいものです。

 ぽりるさん、コメントありがとうございます。長らく不在にしていて申し訳ありませんでした。今後も暇を見ては書き進めて、連載を続けていきたいと思います。

 ではどうぞ。
   
 
  『少年かぐや』 第四回
 
 今日一日そのワンピースを着てなさい――そう言われた夏生が青い顔で石化しているのを見て、咲子はぷっと噴き出した。
「冗談よ、冗談」
「じょ、冗談……びっくりした……」
「ごめんね、夏生君を見てると、ついついからかいたくなっちゃって。お仕事が終わったら外してあげるから、そしたら脱いでいいわよ。そ・れ・と・も、本当に翌朝まで鍵を掛けて欲しい?」
「い、いやですっ! 悪い冗談はやめて下さい!」
 ぶんぶんぶんっ。夏生は思いきり首を横に振った。
 咲子は相変わらずくすくすと笑いながら、二つ並べたティーカップにトワイライトのダージリンを一袋ずつ入れ、ポットでお湯を注ぐ。
「ふふっ、じゃあ、早く着替えてね。まだ、それが残ってるわ」
 そういって、咲子が指さした先には、夏生のデスクに積まれたパニエとエプロンが。
 パニエはスカートの下に重ねばきして、スカートにふんわりとしたボリュームを持たせるスカートのことである。ワンピースの丈が短いせいか、ギンガムチェックの裾からフリルが覗いていた。
エプロンも、調理実習で使ったり裁縫の授業で作ったりするようなシンプルなものではなく、新婚ほやほやの若奥様でもなければ着られないようなような甘ったるいデザインのものだった。フリルのついた肩紐を背中でクロスさせ、腰にある輪っかを通してお尻で蝶結びにする。腰から下はまるでスカートのように、お尻のあたりまでを隠すデザインになっていた。
 そう。この「制服」は、ただのワンピースではなかった。エプロンとセットになった、いわゆるエプロンドレスである。色といいデザインといい、どう見ても小学生、それも低学年向けに作られたものであった。
 いよいよ仕上げだ。頭にすっぽりとネットをかぶり、その上に耐熱ウィッグをセットする。色は蜂蜜のようなブラウンで、髪型は日本人形のようにばっさりと切りそろえる「姫カット」。その上に、サテンリボンをはしごのように編んだヘッドドレスをかぶり、両端の紐を耳の後ろを通してあごの下で結ぶ。
 最後に足元は、赤いエナメルがまぶしいメアリー・ジェーン。わずかにヒールがついているが、歩きにくいほどではない。サイズも25でぴったりだ。
(ああ……)
 その瞬間、夏生は奇妙な達成感と喪失感を同時に感じた。
(着ちゃったんだ、こんな、女の子みたいなワンピースを……)
(ぼくは男なのに……それももう18歳の、予備校生なのに……)
「ふふっ、夏生君。どうしたの、そんな思い詰めた顔をして」
 咲子が、紅茶の入ったティーカップを手に近づいてきた。夏生の正面に回り込み、嬉しそうに笑う。
「うんうん、予想通り――いいえ、予想以上に似合ってるわ。これなら誰が見ても、女の子としか思わないわね」
「そんな、嘘……?」
「嘘じゃないわ。あとは……ちょっとその椅子に座って、こっち向いて」
 夏生がチェアに座ると、咲子はハンドバッグから化粧ポーチを取りだして、中身をデスクの上に広げていった。
化粧水、乳液、ファンデーション、チーク。コンシーラー、ルージュ、リップグロス。アイライナー、アイシャドウ、つけまつげ、アイマスカラ。それは化粧品というよりも、職人の仕事道具か何かのように見えた。
 咲子はそれらを順番に取り上げて、夏生の顔をメイクし始めた。知識のない夏生には何をしてるのか判らないが、顔のあちこちをはたかれたり、塗られたり、つけられたりすること一〇分足らず。目を開けて鏡を見た夏生の眼前には、少女としか思えない自分の顔が映っていた。
「こ、これが、ぼく……?」
「ええ、そうよ。夏生くんは可愛いし、肌も綺麗だったから、お化粧のしがいがあるわ」
「そんな……ぼくが、こんなになるなんて……」
 まだ信じられなくて、思わず頬に手を当てる。すると鏡の中の美少女も、驚いたような表情で自分の顔に触れた。
 咲子はくすくすと笑い、
「ふふっ、ようやく信じる気になれたかしら。さ、今日一日その格好で、頑張ってちょうだい。お店の前を掃除し終わったら、あとはお店の中で電話番と在庫整理をしていてくれていいから」
「は、はい……」
 こんな可愛らしいエプロンドレスを着て、ウィッグを着け、化粧をして、外に出る。雑居ビルの建ち並ぶ一角とはいえ、それなりに人通りはある。考えただけでも、恥ずかしさのあまり膝が震えるほどだ。立ち上がる仕草がぎこちないのは、履き慣れない靴のせいばかりではなかった。
 店の奥から店内に出て、カウンターの裏に置いてある箒を手にする。
 スカートの裾に気をつけながらカウンターの外に出て、店の出口の前に立つ。この扉を一枚開ければ、もうそこは外だ。
「ふぅっ、ふぅーっ……」
 深呼吸して、気持ちを落ち着ける。この程度のことで動揺していたら、これから先、この店でアルバイトなんて続けられない。夏生は一度呼吸を止め、まるで深海に飛び込むように大きく息を吸い込んでから――
 ドアを開けて外に出た。
 
  (続く)

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