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十月兔

強制女装を中心とした小説・イラストのブログです。

2024-05

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『女児転生』 第一章(12)

 リハビリがてらに、『女児転生』を更新します。

 休み中に、一つ貴重なご意見をいただきました。確かに、私程度の文章力ですと、ハードな展開にすると同じようなものになってしまい、『ハード短篇集』の作品と差別化されなくなってしまっている、というのはあるかも知れません。また中途の展開を飛ばして先に進めたのも、マイナスの要因と感じてしまわれたようです。
 今後は無理にテンポアップしようとせずに、一つ一つのシーンを念入りに、時間軸に沿って書いていきますね。

 では前置きが長くなりましたが、どうぞ。

 * * *

 (12)

 そうしてようやく辿り着いた、3年7組の教室。いつもの教室に入り、悪友どもにいまの自分の姿をさらすのは果てしなく憂鬱だった。が、なぜか教室に入る直前、俺は廊下に待たされた。先に入っていった酒匂先生を見送って、何をするのかと思っていたら、ややあって中から声が響いてきた。
「はい、それじゃあ今日は皆さんに、新入生を紹介しまーす!」
 そういう趣向か。俺はがっくりと肩を落とす。
「小学生の女の子だから、みんな戸惑うと思うけど、恥ずかしがり屋で可愛い子だから、みんな仲良くしてちょうだい。いいわね?」
「「「はーいっ!」」」
 中から、同級生たちの実に楽しそうな声が響く。人の不幸は蜜の味、とはよく言ったものだ。この諺では、蜜を提供している側がやりきれない気持ちになる、と言うことも、この一件でよく判った気がする。
 目の前の扉が開き、酒匂先生が俺の手を引く。クラスメートたちの顔が見えた瞬間、
「ひっ……!」
 俺は思わず、息を呑んだ。
 見慣れたクラスメートの顔は、好奇に満ちて俺を見つめていた。何せ、普段見慣れた同級生が、まるで小学生のような格好で、教室の前に引きずり出されているのだ。俺だって、もしも他のやつが同じ状況に置かれているのを見たら、無責任にじろじろ見るか、笑い出すか、あるいは野次の一つも飛ばすことだろう。
 しかし。しかし、だ。自分がその立場に置かれたとすれば、話は別だ。たとえ、他人事であればげらげら笑うだろうと自分で判っていながらも、我慢できるものと、そうでないものはある。
 いま俺が置かれている状況は、まさにそれだった。こんな小学生のような服、それも女児制服を着て、クラスメートの眼前に引き据えられるなど、およそ考えたくないほどの恥辱だ。
 クラスメートたちは、そんな俺の内心に気付くはずもない。最初は驚いたように見ていたのが、誰かが笑い出したのをきっかけに哄笑がひろがり、いつしか野次まで飛び交いだした。
「似合ってるぞー、タケシー!」
「山野君、かわいいよーっ! 小学生みたーい! あははははっ!」
「もうそのまま小学校に行けそうだね! すぐ近くに小学校あるし、行ってみたらどう?」
(こいつら……おぼえてろ……!)
 笑いながら野次を飛ばす同級生たちを、俺は奥歯を噛みしめて睨み付ける。
「っ!!」
「お…………」
「う……」
 その剣幕に押されたのか、笑いがややおさまりかける。俺自身の手で、何とか流れを掴みかけたときだった。
「ほらみんな、山野君が恥ずかしがってるじゃない。あんまりからかうようなことを言っちゃだめよ。山野君は、小学生の女の子になりたがってるんだから、ちゃんとそういう風に扱ってあげなきゃ!」
 教室の真ん中で、莉子が声を張った。この女は、変なタイミングに余計なことを……!
 この一言で、クラスの空気がまた変わった。「山野が怒っているからからかうのはやめておこう」というムードだったのが、「山野は小学生の女の子になりたがってるんだから、からかっちゃ悪いよな」というものにすり替えられてしまったのだ。
 おそらくはクラスメートたちにも、俺に野次を浴びせかけることに対する後ろめたさがあったのだろう。だからこそ、これ幸いと莉子の言葉に乗じたのだ。俺はそう分析した。莉子がそこまで計算して、さっきのセリフを言ったのかは判らないが、あまりにも効果的な一言だった。
 さらに先生が追い打ちをかけるように、
「はいはい、みんな、静かにして。お友達をからかっちゃダメよ。えーと、お名前は……」
 いいながら黒板に向かい、平仮名で「やまの たけし」と縦書きする。
「山野武志君よ。ほんとうは高校生の男の子なんだけど、小学生の女の子になりたいから、こうやって可愛い制服を着ているんだって。だからみんな、ほんとうに小学生の女の子が来たんだと思って、仲良くしてあげてね?」
「「「はーい!」」」
(後でこいつらまとめてぶん殴る)
 俺は秘かに決心した。
「じゃあ、山野君。改めて女の子として、自己紹介してちょうだい。他のみんなも、笑っちゃダメよ」
「くっ…………」
 俺は歯がみした。しかし先生は、背後からこう囁く。
(あんまり嫌がってるのも大人げないわよ。どうせ一日限りのジョークなんだから、そう思って女の子のふりをしていなさい)
「うううっ!」
 この設定の一番つらいところは、ジョークと本気の区別が曖昧なことだ。俺に対しては「ジョークなんだから本気になるのは大人げない」と言って反論を封じつつ、周りに対しては「本気なんだけどジョークに紛らせてあげて」と言って、あたかも俺がほんとうにこういう服を着たがっているかのように錯覚させる。ほんとうに、悪魔のような発想だ。

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