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十月兔

強制女装を中心とした小説・イラストのブログです。

2010-11

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『女児転生』 第三章(1)


  第三章 非日常(1)


 けっきょく俺は、幼稚園生のスモックを着たまま学校に行くことになった。予想通り、道すがらずっと注目を浴びることになった上、まだ部活動中で残っている生徒も数多くいる。到着してすぐとんでもない相手に捕まった。
「おい、山野!」
 校舎ロビーで行き会わせたのは、クラス担任の高塚先生。銀縁眼鏡の奥で目を見開き、
「なんだその格好は。お前、そんな格好で学校まで来たのか? まるで幼稚園児じゃないか」
「その、これは、なりゆきで仕方なく。本当はこんな格好、したくないんですけど」
 高塚先生はじっと俺の顔を見ていたが、
「まぁいい。酒匂先生が呼んでいるからな、英語科教室で荷物を受け取ってくるように。それと、急に学校から逃げ帰るんじゃないぞ」
「は、はい……」
 話を信じてもらえたんだろうか。判らないまま、高塚先生は俺に背を向けて外に向かう。しかし最後に振り返り、
「ああ、それと学校では、制服もしくは標準服が基本だからな。さすがに幼稚園児はまずいから、せいぜい女子制服を着てくるくらいにしておけ」
「っ、だからそんな趣味はっ……!」
 高塚先生はみなまで聞かず、視界からいなくなった。信じてもらえていない。今度こそ本当に孤立無援だ。
 俺は緩む涙腺を懸命にこらえて、四階にある英語科教室に向かう。ノックして中に入ると、酒匂先生が待ちかまえていた。
「あら……あらあらあら、ずいぶん可愛らしい格好になってるわね。うふっ、昔を思い出すわ」
 酒匂先生はなぜか遠い目をしたあと、机の上にまとめて積んであった荷物を指さし、
「そこにいちおう、山野くんの荷物はまとめておいたわ」
「ほっ……」
 良かった。荷物の中には、ここで脱いだ男子制服も入っているはずだ。少なくとも帰り道は恥ずかしい思いをしなくて済むだろう。……え?
「お、俺のバッグは!? 確か制服は、あのバッグに入れていたはず……」
「バッグ? おかしいわねぇ、見あたらないわよ。けれど教科書とかはそのランドセルに入れてあるから、それを背負って帰ればいいじゃない」
 わざとらしく首をかしげる酒匂先生に、俺は事態を把握した。佐々木莉子だ。あいつが俺の教科書類──無くては困るものだけをとりだしてランドセルに詰め、かわりに男子制服を俺のバッグに詰めて、持って行ってしまったのだ。きっと明日になったらしれっとした顔で、「山野くん急に帰っちゃったから、あたしが持って帰ってあげたのよ」とでも言うつもりだろう。悪辣な女だ。
 なら体操服は──とも思ったが、こっちも駄目だ。体操着を入れたロッカーの鍵は、莉子が持ち去ったであろうバッグの中に入っている。
「くすっ、幼稚園の制服にランドセルってのは、ちょっと似合わないかしらね。どうする? こっちの女児制服に着替えていく?」
「っ……な、なら男子制服か体操服を貸してもらえませんか……?」
 幼稚園児のスモックと小学生の制服、それも両方とも女児用だなんて、窮極過ぎる選択だ。ランドセルは我慢するにしても、せめて普通の格好に戻りたい。
 だが酒匂先生は──予想通り──首を横に振り、
「ちょっと今、予備の男子制服はきらしているのよ。けど確か、女子制服ならあったかしら。それでも良ければ貸してあげるけど?」
「じょ、女子制服……」
 普段女子が着ているあの制服を思い出して、絶句する。白地に水色のラインが入ったセーラー服。あれを着るのは……
 しかしまだ、目立たないという点から言えば他の候補よりはマシかも知れない。
「わ、判りました。女子制服を貸してください……」
 恥を忍んで言うと、
「ん? なんて言ったの? よく聞こえなかったから、もっと大きな声で言ってちょうだい」
「ぐっ……」
 酒匂先生は首をかしげ──えい、わざとらしい! この先生はやっぱり、佐々木莉子と同類だ。俺がに恥ずかしい思いをさせるのが、好きでたまらないのだ。
「じょ、女子制服を貸してくださいっ!」
「くすくすっ、仕方ないわね。それじゃ、荷物をまとめてついていらっしゃい。さすがにここにはないから──保健室まで行きましょ」
 保健室に連れて行かれ、ようやく園児服から制服に着替えることができた。恥ずかしいが、それでも園児服に比べればずっとマシだ。俺は先生に型どおりのお礼を言って、ランドセルを手に提げて(さすがに背負って帰る気にはなれない)いつもより暗く長い帰路についた。

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